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 ちょこっとしか書けませんでした。
 少しでも楽しんでいただけると………大丈夫かな? 中途半端だし。

 えとえと、5回目、コメントありがとうございました~♪

 6回目。


 陛下が、怖い。

 あれから、陛下の視線が、やけに、恐ろしく思えるようになってしまった。

 情けないけど、あの時の恐怖があるから、必死で、陛下を父上と呼ぼうとがんばった。

 それで、つっかえながら、どうにか、父上と呼べるようにはなったんだ。

 けど。

 わかるだろう。

 心の中では、陛下は陛下のままなんだ。

 一緒にいた時間が違いすぎるんだ。

 だろう?

 陛下のすっと釣り上がり気味の眉が、が、つっかえるたびに、顰められる。

 陛下の意志の強そうに引き結ばれたくちびるが、何かを云いたそうに引き攣れる。

 また、あんなに怒られやしないだろうかって、オレの背中が、ぴりぴりと逆毛立つ。

 だけど。

 オレはどうしたって、木彫り職人の息子だっていう意識が抜けない。

 木彫りで身を立てたいって、強く思うようになってしまった。

 多分、これは、逃避なんだろう。

 わかってるんだ。

 それでも。

 どれだけ眠くても、木切れと小刀を持たないではいられなくなっていた。

 木を掘りながら、うとうとしていたらしい。

 危ないだろう―――と、ジーンが小さくささやく。

「明日もはやいんだし」

 こっそりとささやく言葉は、あまり昔と変わらない。少し、やわらかな口調になってるけど、そ

れは、仕方ないのかもしれない。誰が聞き耳たててるかわからないしな。あえて変えないようにし

てるんだろうと、ジーンのやさしさが、心に染みる。

 普通の大きさのときは、ジーンも、丁寧な言葉を使う。

 それが、寂しくてなんなくてさ。

 まだ、ここに来たばかりのときだったから、盛大にごねたんだ。

 こっそりと、離れのみんなの家に行ったときだったけど。

 そのときの約束を、ジーンが忘れないでいてくれるのが、オレにとっての慰めだった。

 はっきり云って、ジーンがいなけりゃ、オレは、きっと、どうやってでも城から逃げ出したに違

いないんだ。

 ジーンは、時々オレに勉強を教えてくれている偉い学者先生と対等に話したりしているから、こ

こで時間を貰って勉強することが楽しいんだろう。

 ジーンの勉強時間は、オレが勉強したり武術の訓練をしている間なんだ。どうも、これって、特

別扱いらしいんだけど。でも、ジーンの頭がいいことは、いつの間にかまわりに知られるようにな

ってたから、表立っては誰も何も云われないみたいなんだ。

 あまりオレも邪魔はしたくないけど。

 ジーンは、多分、オレより忙しいはずだから。

 まじめに復習したり予習したりしてるのに、オレの面倒を見なけりゃならないし。いったいいつ

寝てるんだろう。

 ジーンが勉強してる間は、オレの身の回りは、別の小姓がみてくれてる。けど、オレがやらない

といけないことを終えた後は、ジーンがみてくれる。そういう決まりになっているらしい。

 ジュリオにきいたんだけど、ひとりの王族に小姓は十人近くいるみたいだから、オレの世話をや

いてくれる小姓の数が特別多いってわけじゃないんだろう。それでも、オレ、服を着るのも風呂に

はいるのも、靴を履くのだって、基本独りでできるんだ。当然だろう、赤ん坊じゃあるまいし。



 風呂なんか、裸を他人に見られたくないって意識のほうが強すぎる。

 オレのからだは、どんなに鍛えても、悲しいかな、筋肉がつかない性質らしくて、まだ、あばら

骨が見えるんだ。そんなの、ジーン以外に見られたくない。

 色々あって、結局、オレは、ジーンに頼っちまうんだ。

 甘えてるよな。

 当然って、甘えてる。

 変なところで、オレ、我儘になってるみたいで、なんか、ジーンに申し訳ない。

 でも、そう云ったら、

「俺は、お前の面倒を見るって云うことで、勉強させてもらってるからな。それに、お前の我儘な

んかなんてことないしなぁ」

って、笑いながら、答えてくれたんだ。

 オレ、思わず泣きそうになって、

「泣くやつがあるか。まだまだ、ガキンちょだな」

って、ジーンに額をこつかれちまった。

 こんなとこ誰かに見られてたらことだから、こっそりとだけどな。
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