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2024/03
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中吉……三連続
 今日はかけなかったので、少々先行き怪しいのですが。
 あと、これ、今は女の子が中心みたいですが、あくまでジュネですので。念のため。



『王さまのお気に入り』2回目


「おまえ……そなたのことが、好きだ」

 白亜の白をのぞむ泉のほとりで、少年が少女に告げた。

「王子さま…………」

 軽くウェーブした黒髪の少女が、まぶしそうに、愛を告げた少年を見上げた。

 しっとりと艶めいて上品な衣をまとった少年が、少女を見下ろしている。

 少女はといえば、簡素な綿のドレスにエプロンという姿である。それは決して、少女の位が高くはないことを物語っていた。

「オレの………私のことが、嫌いか?」

 一歩後退さった少女に、王子と呼ばれた少年の褐色の瞳が翳る。

 少女が、必死に首を横に振った。

「なら、どうして?」

 王子が、すっとその場に膝まづいた。そのまま少女の簡素なドレスの裾を手に、くちづける。

「わたしは、ただの、侍女です」

 今にも泣き出しそうな少女の声に、

「そんなこと、かまわない。オレ……私は、お前………そなたの手を求めている」

 少女を見上げる少年の褐色のまなざしに、切なくなるような何かを感じて、少女の胸が、熱く脈打つ。それでも、うべなうことなどできようはずがなかった。

 彼は、王子なのだ。

 しかも、この国、大国との誉れ高いアルジェントの第一王子なのである。

 たとえ、彼が王位継承権から遠く離れた王子であったとしても、貴族ではない自分など妾としてすら、存在が許されないだろう。

 王子よりも二つ年上の少女である。夢見がちな年頃ではあったが、王子よりも長く王宮勤めをしている少女には、それが、よくわかっていた。

 つい先ごろようやっと王宮に帰還の叶った王子は、国王が傍から離そうとはしないほどの溺愛ぶりなのだ。

 そう。

 この王子は、生まれてすぐ、王妃であるその母親と共に何者かに攫われ、ほんの一ト月前まで生死すら不明だった。

 その間どこにいたかといえば、アルジェントの辺境と呼ばれる地域、隣国との国境付近の小さな村であったのだという。

 王子の母である王妃を愛していた王は、ふたりが消えてからの十三年という歳月、決してふたりを諦めず、探させつづけていたのだ。

 そうして、第二王子の誕生日に、第一王子が見つかったとの報が入った。
 
 残念なことに王妃はすでに身罷っていたが、王子は無事だった。

 自分がまさか王国の世継ぎとは夢にも思わず、ごく普通の少年として、暮らしていたのだという。

 年齢が近いからという理由で、王子の身の回りの世話係の一人へと、ある意味出世を果たした少女だったが、これ以上の出世など町場出身の少女には考えられなかった。

 たとえ、少女が王子をかわいらしいと思っていたとしても、ほんの少しだけ王子さまという雲の上の位にある少年に憧れじみた感情を抱いていたとしても、それが、王子さまからの思いもしない告白で恋心へと変わったとしても、絶対に、幸せになれはしないのだと少女には、わかっていたのだ。

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