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昇紘x浅野
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 パロディのパロディということで。

「え? 行かないの?」
 目をまん丸にして、明蘭が聞き返してくる。それに、オレは、
「楽しんで来いよ」
と、答えた。
 今日は、ここ、止水(しすい)の郷長の屋敷で、パーティーがあるんだそうだ。
 冬の寒さを忘れて一晩楽しもうという企画だそうで、明蘭は前からとっても楽しみにしていた。
 オレも、はじめは、明蘭に付き合うつもりだったんだ。
 祭、嫌いじゃないし。
 けど、蓮雫(れんだ)に聞いた、あることで、オレは、止めることにしたんだ。
 そりゃあ、明蘭が楽しそうにしてるのを見るのって嬉しいけど、けどな、やっぱり、自分が楽しませてやりたいって思っちまう。それは、オレが、明蘭を特別に思ってるからなんだろうか。
 特別――たしかに、明蘭は、特別だ。この異邦の地に流れ着いたオレを、拾い上げてくれて、面倒をみてくれてる。オレより年下だろう、女の子が、だ。これは、もう、感謝するっきゃないことだ。言葉もわからなかったオレに、明蘭は、気長に根気よく、教えてくれた。だから、オレは、こっちに来て三ヶ月目くらいだというのに、かなり、ことばがわかるようになったんだ。
 どんだけ感謝したって、したりないだろう。
 きっと、明蘭に拾われなかったら、オレは、その辺でわけがわかんねーまま野垂れ死んでたって思うからだ。
 だから、オレは、蓮雫に、明日が明蘭の誕生日だっていうのを聞いてから、今日の祭に付き合うのは、よそうって、決心したんだ。
 明蘭の、アーモンドみたいな、きらきらと光る目が、気落ちしたみたいに地面に逸らされた。
 ごめん。
 オレだって付き合ってやりたいさ。けど、オレは、楽しんで帰ってきた明蘭に、もっと、もっと、嬉しくなってほしいんだ。
「この帳簿、今日中に仕上げたいからさ」
 明蘭家は、廻船問屋だ。で、なんでかは知らないけど、明蘭と蓮雫のふたりで切り盛りしてる。もちろん、力仕事をする人足はほかにたくさんいるけど、帳簿をつけてるのは、明蘭だった。で、見てると、どうも、明蘭は、数字が苦手らしいんだよな。蓮雫も、からっきしらしい。だから、オレが、こっちっかわの数字を教えてもらって、帳簿付けを引き受けたんだ。え? 元の世界で、オレ、数学は案外成績よかったんだ。
「ふぅん」
 明蘭のつま先が、土間を、蹴った。
「つまんない」
「蓮雫といってこいって」
「浅野も一緒がいいなぁ」
 うるうると、なんかのコマーシャル見たく、見上げられても、ここは、心を鬼にしよう。
「ごめん」
 鬼にしては、いまいちだがな。
「いいもん! そんないけずするんだったら、お土産なしだからねっ」
「ごめんってば!」
「しらないっ」
 そっぽを向いちまった明蘭を、蓮雫に預けて、オレは、帳簿に向かった。
 帳簿は、言葉どおり片付けてないとな。

「よっし」
 帳簿付けは終わった。
 机の周りを片付けて、オレは、フェルトのようなフリースのような生地の上着を着込んだ。
 ちょっと重いけど、動きにくいけどさ、案外温いんだ。
 しっかり戸締りをして、火を消して、オレは、篭を手に、店を後にした。
 町は、静まり返ってる。
 なんか、雪でも降りそうな、冷たさだ。
 空は、すっかり、暗い。
 堤燈とでも言えばいいのか、とりあえず、それを手に、足元を照らす。
 この時、実を言うと、オレは、この世界に妖魔っつう生き物がいて、どっちかっつーとやつらは夜行性だってことを知らなかったんだよな。いや、昼日中に出るのもいるらしいんだけどさ。ともかく、玉座に王がいて、それが長いから、滅多なことでは、町中に現われないんだとさ。
 後で聞いて、冷や汗モンだったけど、まぁ、終わりよければ……って言うしな。
 ともあれ、オレは、町外れの森の中に、足を踏み入れたんだ。


 こんな感じですかね。
 日記その1に書いたお話になるかな? まぁ、それ以前に、書ききれるかどうかが問題だったりxx

 写真は、かくれんぼしてるつもりらしい、ロイ。
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