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2024/02
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桓祥? + 昇浅 + 剣ちゃん(ゲスト)  3回目
 あの男―――。

 酒を呷っていた更木は、廊下を歩く男を見やった。

 意外とできるな。

 町人のなりをしてはいるが、かなりの手誰と見た。……面白そうだ。

 ぞろり――くちびるを、赤い舌が舐め湿す。

 他の男たちは、止水屋をしとめるために奥に行っている。しかし、止水屋ひとり殺るのに十人からの浪人が要るわけもない。

 ものぐさを決め込んだ更木である。

 ここにいれば強い男と仕合える――との思惑が、ここのところ、外れまくりである。

 どうせいのちの遣り取りをするのなら、強いヤツがいいに決まっている。

 あいつ。あの川原ですれ違った、青い目の男と、ヤりあってみたい。

 ゾクゾクするような充実感を想像し、更木の背中が、粟立った。

 廊下を歩いていた男の足が止まったのは、その時である。

 振り返った男と、更木の視線とが、ぶつかる。

「おまえは、行かなかったのか」

「たかだか町人ひとりヤるのに、俺の腕は高くつくぞ」

「そうか」

 フッと片頬で笑われた気がして、

「なら、仕合ってみるか」

と、刀の鍔に手をかけた。

「遠慮しておこう」

 そう言い置くと男は、背中を向けた。

 相手にされなかったことに憮然となって、

「次の獲物は、強いヤツにしてくれ」

と、男の背中に向かって、更木は叫んだのだった。







 お郁はぼんやりと、庭を眺めていた。

 三原の葬儀は、お郁が出した。

 誰もが、彼女のことを腫れ物に触れるようにして、接してくる。それが辛くはあったが、やめてくれという気力もなかった。

 食欲もない。

 眠れない。

 何かをしようという気力すら、わいては来なかった。

 池のほとりの水仙が、ゆらゆらと、揺れている。その動きに誘われるかのように、お郁は、ふらふらと庭下駄を突っかけた。

 池の岸にしゃがみこみ、水仙のはなびらに触れる。

 なんだろう。

 心の中、凍りついたものがある。

 涙は、一滴も流れない。

 父――――と、ずっと、信じていた。

 あれが、父だと。

 しかし。

 戸板に乗せられていた三原の顔を見た刹那に、お郁を襲ったのは、忘れ果てていた、昔だった。遠い、松林の中の光景である。かつての、自分の、すべてだった。

 加古たちの悲鳴と、血しぶき。

 自分をかばう、胸の鼓動。

 張り裂けんばかりだった、胸。

 顎を持ち上げられた時の痛みすら、甦っていた。

 見下ろしてきた、視線の、怖さ。

 これまでの自分が音たてて砕けていった。いや。砕けるほどのものなど、自分は、育ててはいなかったのにちがいない。そう。自分は、ただの、

「だたの、人形…………」

 お郁のくちびるが、ひきつれる。

 身の内からこみあげてきたものに、お郁は水仙を力任せに握りしめていた。

 音をたてて、引き千切る。

「惨いことをする」

 背後からの声に、

「あなたになど、言われたくありません」

 振り向きもせず返し、手にした水仙を投げ捨てた。

 池の水面に波紋が広がり、男の顔が、揺らいだ。

「なにを、拗ねている」

「拗ねてなど、いません」

「悔やみを言いに来たのだが」

「結構です」

 肩にかけられた手を跳ね除けようとして、逆に握られた。

「やめてください」

 無理に立ち上がらされて、背後から、抱きしめられる。

「イヤです。もう」

 振り払おうにも、力がはいらない。

「三原に、操立て………か?」

 キリキリと力を込められて、お郁の気が、遠くなる。

「あなたの仕組んだこと――――でしょう」

「私が?」

「ちがうとでも?」

「違うな。私がおまえを他人に抱かせるわけがないだろう」

「…………」

「三原に、抱かれたのか」

 耳もとでささやかれて、お郁が、震える。

 声色にそれまでの、揶揄するような調子ではなく、本気を感じて、

「そ、んな、ことっ」

 力任せに、抗った。

 しかし、男には、微塵も堪えてはいない。

「どうした?」

「できるわけないって、あなたが一番知っているじゃないですか」

「そうだな」

 男が、喉の奥で、笑った。


 
今のところ、ここまで。

◇雑記◇
 時代物もどきを書きながら、そういえばこれまでどんな時代物読んでたっけなぁと、記憶を辿ってみた。
 一時、現実逃避で時代ものに転んでた時があるのですが。
 なつかしの、春陽堂文庫にはよくお世話になりました。同文庫で、名前を思い出せなかったのですが、ようやく思い出せた時代物作家さんに、山手樹一郎というひとがいたような記憶があるんですが。多分、文庫では、遠山の金さんか何かを書いてたような………。あやふやですけどね。で、同じく、江崎俊平さん。このひとのは、時代物版ハーレクインロマンスと言ってもあながち間違いではなかろうかとvv 好きでしたねvv お城を抜け出した若様が、町で知り合った女の子とハッピーエンドとか。そればっかりじゃなかったですが、魚里が読んでたのは、案外ラストは大団円でしたね。山手さんが朱色に錦絵風のカバー(だったはずだ)だったのに比べて、藤色か水色に水彩画風のカバーの色に、なよやかな女のひとと、凛々しげな男の人がほとんどだったと記憶してます。取っ掛かりは、カバーイラストからでしたからね~江崎さんの場合vv
 んでもって、角川文庫から出てた、「流され者」という、時代物。多分、小説ジュネで、紹介されてたような記憶がvv たしか、ピカレスク物だ。主人公が強烈な、バイセクシュアルで、八丈島の権力者だかなんだかのお侍さんで、気に入った男のひとをそういう相手にしてました。が、同時に、やっぱり流されてた女医さんにめろめろに惚れてしまうんですよね。手酷く振られまわってるのに諦められず、その情欲が、件の男性に向かってたようなxx 色悪っぽいような、破天荒なような、サディストなような、複雑奇怪な主人公は、坂本竜馬の親友という設定でした。うん。羽山信樹さんって作家さんの作品だったかなぁ。全三冊か四冊くらい。
 あとは、南條範夫さん、池波正太郎さん、柴田錬三郎さん、ですかね~。宮部さんは、最近になってからです。
 時代物……ああ、京極夏彦さんもですかね。うん。
 しかくのさんという漫画家さんが、「嗤う伊右衛門」を漫画化されてるのを、入手して読みました。一番の理由は、しかくのさんが、好きなんですが。最近、ASUKAには描かれてないんですねぇ……って、ミステリーDXがなくなっちゃってますもんねxx で、魚里は、原作未読なのですが、「巷説」シリーズの又市さんの過去とリンクしてるらしいという情報は入手していたのです。もっとも、単純に、伊右衛門=又市? とかって考えてただけですが。はずれ! 御行しておりました。でもって、これ読むと、原作読みたくなります。枚数制限されてるのが一番の理由でしょうが、想像力で行間を補わんとわかりずら過ぎるんですよね~。が、ものは、ミステリ系ですから。謎が謎よぶっつーかなんつーか。思わず原作買おうかと迷ったくらいですから。そのうち買うかもvv

 最近やってみたいゲームが、DSなんちゃらの、脳を鍛えるってやつですが。本体持ってないので、無理。買う気力もなし。姪が持ってるので、別に借りればいいだけなんだけどね。それも面倒でxx ああ、気力がvv 大体、今、魚里がやってるゲームって、なつかしの、テトリスだもんよ。某大型スポーツ用品店で、偶然見つけて半額で買ったの。500円というのが、泣けると思う。こういう単純なの、嵌るんですが。ヘボだから、低得点です。
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春陽堂文庫、山手樹一郎に反応しました♪(^o^)。
>案外ラストは大団円でしたね。
~そうなんです。時代物の多くは大団円なので安心して読んでいられるんです(^o^)。山手樹一郎さんの時代小説はいっぱい読んでます。それと山本周五郎さん♪。池波正太郎さん、柴田錬三郎さんのも良いでふよね♪。女性の時代小説では平岩弓枝さん。「御宿かわせみ」はずっと読んでます。あと宇江佐真理さんのも好き♪。
 私のお薦めは(米村圭伍)新潮文庫「退屈姫君伝」主人公のめだか姫が最高です♪(^o^)。
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魚里

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