昇紘x浅野 漣遠絡み
2005-02-04(Fri)
とりあえず、日記2より移動。
外に出たい。
息が詰まりそうだ。
けど、立ち上がっただけで、目の前が、くらくらと眩む。
ゆっくりと、オレは、それに近づいた。
花瓶に活けられてる花の匂いが、煩いくらい鼻につく。
薄い花びらが、忌々しい。これが、オレに届けられるようになって、あいつが現われた。そうして、オレは、ここに、閉じ込められているのだ。
やわやわとはかなげに揺れる花首を、握りしめる。ひんやりと冷たく湿ったはなびらを、オレは、毟り取った。
視界の隅で、桂花が小さく震えたのを捉えながら、オレは、ただ、次々と花首を毟っては捨てつづけた。
誰か。
誰でもいい。
オレを、助けてくれ。
せめて、ここから、出してくれ。
でないと、オレは、狂ってしまいそうだ。
昇紘の屋敷に来てから、どれくらいになるのか、オレには、わからなかった。
一月か二月か。それとも、もっと長いのか短いのか。
どちらにしても、まだ、冬だ。
オレが、昇紘を刺してから、まだそんなに経っていないのかもしれない。
それとも、とっくにオレは狂っちまってて、この冬は、ここに来てから何度目かの冬なのかもしれない。
このごろ、頭がぼんやりしている。
その間、オレは、昇紘としか喋っちゃいない。オレの身の回りの世話をするとかで、つけられた桂花というこどもは、喋れない。喋れたとしても、オレには、こっちの言葉はわからないから、同じことだ。明蘭のところで少しずつ覚えてたこっちの言葉なんか、もう、思い出せもしない。オレの診察をしに来る医者や、助手のあいつも、こっちの言葉しか話せない。だから、結局、オレは、昇紘としか、喋っていないのだ。
それに、おれは、もう―――――
こんなになっても、まだ考えたくない単語が、オレの頭の中に、犇(ひし)めいている。
オレが毟った花の残骸を、桂花が片付けている。
明蘭よりも小さな少女だ。
桂花は、片付けにかかる前に、オレを、牀榻へと連れ戻した。掃除の邪魔ってことなんだろう。
鈴が鳴った。
部屋の扉についているヤツだ。
ここに用があって、入れるヤツがいるときに、鳴らされる。
昇紘か、それとも、医者と助手のどっちかだ。
どっちが来るのも、イヤだ。
昇紘が、ここに来るのは、オレを抱くためだ。
それに、医者は、オレの体調を診るために来る。オレが倒れでもしたら、昇紘は、オレを抱けないからな。だから、そんなことがないように、来るんだ。
扉が開いた。
桂花が出迎える。
ああ。
医者と助手だ。
笑いかけてくる医者に、少しだけ頭を下げる。できるだけ、助手を見ないようにしながら、オレは、牀榻から下りようとした。
それを、押しとどめたのは、助手だった。
牀榻の縁に腰かける格好で、オレは、助手を見上げた。
助手も、笑ってる。けど、オレの全身は、強張りつく。
オレは、こいつが、苦手だ。
桂花はうっとりと見惚れたりしてるみたいだが、やけに整ったきれいな顔が、その中のふたつの灰色の目が、ぞっとするくらい、冷たいように思えるからだ。灰色なんていう色のせいかもしれないが、この目にさらされるくらいだったら、まだ、昇紘の目のほうが、ましだと、いつも思ってしまう。昇紘の、オレを、そういう対象として見ている視線のほうが、好きではないが、わかりやすいからだ。
オレにとって屈辱的な診察がやっと終わった。
脱がされた服を着なおそうと、前をしめようとするのだが、小さなボタンのひとつひとつにやけに時間がかかる。最近は、いつもこうだ。服ひとつ着るのにも、桂花の助けが必要になる。情けない。そう思うたびに、涙がこみあげてくるのが、また、腹立たしいくらいに情けない。
診察をした後、医者は部屋を出て行った。
桂花もいない。一緒に行ったのか?
残ってる助手が、椀を手に、近づいてくるのが、目の隅に映った。
また、あれを飲むのか。
どろりと苦い薬湯が、鼻をつく。
椀を受け取ろうとして、まだ穴に通せていなかったボタンが、手から滑った。
いつから、こんなにもたつくようになったのか。
肩から力が抜ける。
喉の下の小さなボタンに、もう一度手を伸ばした時、助手の持っていた椀が、小さな音をたてて棚の上に置かれた。
(?)
見上げた視線が、助手の動きに連れて、目の前へと移動する。
目の前に肩膝立てた格好でしゃがみこんだ助手が、オレのボタンに、手を伸ばしてきた。
パシッ!
咄嗟に、オレは、ヤツの手を、拒んでいた。親切で留めてくれようとしたのだろうが、診察以外で、触られたくなかった。けれど、いくらなんでも、手を叩いたのは、まずかったろう。叩いたうえに、まるで襲われそうになったとでもいいたげに、喉もとの布を掴んで逃げ腰な体勢になっている自分に、我に返った。
〔わ、りぃ〕
恐る恐る視線を助手へと移せば、オレに叩かれた手を、呆然と見てる。
〔ごめん〕
通じはしないだろうが、声にせずにはいられなかった。
21:00 2005/01/30―16:00 2005/01/31
漣遠視点だと思い込んでたら、漣遠がらみの話でしたね。
浅野くんは、壊れつつあります。
少しずつ、快感感じるようにはなってると思うんだけど、それが逆にショックだったりしそうだよね。最初が、痛いってだけだったと思うので、突然それに快感が~なんてなったら、混乱してしまいそうです。
魚里の中の浅野くんは、どうもこうも、はかなげなお姫さまですxx う~ん。もちっと強くならんと。
この後、漣遠がどう出るかで、悩んでるんでした。
パターンとしては、ふたつほど。
1、大岡越前の捕物みたいな感じ。―――どんなんや。奥さんを人質に取られて、盗賊の首領か何かを牢から解放しろって脅迫されるパターンね。だとすると、漣遠は、盗賊のナンバー2あたりになりそうだ。
2、もうただ、可哀想に思って、逃がしてやる。―――命がけだな。漣遠。浅野くんに惚れたか? 理由は? なぞ。なんつーか、フェロモン出てるんかも知れん。こっちになると、『狂恋』と時間軸が同じになります。
外に出たい。
息が詰まりそうだ。
けど、立ち上がっただけで、目の前が、くらくらと眩む。
ゆっくりと、オレは、それに近づいた。
花瓶に活けられてる花の匂いが、煩いくらい鼻につく。
薄い花びらが、忌々しい。これが、オレに届けられるようになって、あいつが現われた。そうして、オレは、ここに、閉じ込められているのだ。
やわやわとはかなげに揺れる花首を、握りしめる。ひんやりと冷たく湿ったはなびらを、オレは、毟り取った。
視界の隅で、桂花が小さく震えたのを捉えながら、オレは、ただ、次々と花首を毟っては捨てつづけた。
誰か。
誰でもいい。
オレを、助けてくれ。
せめて、ここから、出してくれ。
でないと、オレは、狂ってしまいそうだ。
昇紘の屋敷に来てから、どれくらいになるのか、オレには、わからなかった。
一月か二月か。それとも、もっと長いのか短いのか。
どちらにしても、まだ、冬だ。
オレが、昇紘を刺してから、まだそんなに経っていないのかもしれない。
それとも、とっくにオレは狂っちまってて、この冬は、ここに来てから何度目かの冬なのかもしれない。
このごろ、頭がぼんやりしている。
その間、オレは、昇紘としか喋っちゃいない。オレの身の回りの世話をするとかで、つけられた桂花というこどもは、喋れない。喋れたとしても、オレには、こっちの言葉はわからないから、同じことだ。明蘭のところで少しずつ覚えてたこっちの言葉なんか、もう、思い出せもしない。オレの診察をしに来る医者や、助手のあいつも、こっちの言葉しか話せない。だから、結局、オレは、昇紘としか、喋っていないのだ。
それに、おれは、もう―――――
こんなになっても、まだ考えたくない単語が、オレの頭の中に、犇(ひし)めいている。
オレが毟った花の残骸を、桂花が片付けている。
明蘭よりも小さな少女だ。
桂花は、片付けにかかる前に、オレを、牀榻へと連れ戻した。掃除の邪魔ってことなんだろう。
鈴が鳴った。
部屋の扉についているヤツだ。
ここに用があって、入れるヤツがいるときに、鳴らされる。
昇紘か、それとも、医者と助手のどっちかだ。
どっちが来るのも、イヤだ。
昇紘が、ここに来るのは、オレを抱くためだ。
それに、医者は、オレの体調を診るために来る。オレが倒れでもしたら、昇紘は、オレを抱けないからな。だから、そんなことがないように、来るんだ。
扉が開いた。
桂花が出迎える。
ああ。
医者と助手だ。
笑いかけてくる医者に、少しだけ頭を下げる。できるだけ、助手を見ないようにしながら、オレは、牀榻から下りようとした。
それを、押しとどめたのは、助手だった。
牀榻の縁に腰かける格好で、オレは、助手を見上げた。
助手も、笑ってる。けど、オレの全身は、強張りつく。
オレは、こいつが、苦手だ。
桂花はうっとりと見惚れたりしてるみたいだが、やけに整ったきれいな顔が、その中のふたつの灰色の目が、ぞっとするくらい、冷たいように思えるからだ。灰色なんていう色のせいかもしれないが、この目にさらされるくらいだったら、まだ、昇紘の目のほうが、ましだと、いつも思ってしまう。昇紘の、オレを、そういう対象として見ている視線のほうが、好きではないが、わかりやすいからだ。
オレにとって屈辱的な診察がやっと終わった。
脱がされた服を着なおそうと、前をしめようとするのだが、小さなボタンのひとつひとつにやけに時間がかかる。最近は、いつもこうだ。服ひとつ着るのにも、桂花の助けが必要になる。情けない。そう思うたびに、涙がこみあげてくるのが、また、腹立たしいくらいに情けない。
診察をした後、医者は部屋を出て行った。
桂花もいない。一緒に行ったのか?
残ってる助手が、椀を手に、近づいてくるのが、目の隅に映った。
また、あれを飲むのか。
どろりと苦い薬湯が、鼻をつく。
椀を受け取ろうとして、まだ穴に通せていなかったボタンが、手から滑った。
いつから、こんなにもたつくようになったのか。
肩から力が抜ける。
喉の下の小さなボタンに、もう一度手を伸ばした時、助手の持っていた椀が、小さな音をたてて棚の上に置かれた。
(?)
見上げた視線が、助手の動きに連れて、目の前へと移動する。
目の前に肩膝立てた格好でしゃがみこんだ助手が、オレのボタンに、手を伸ばしてきた。
パシッ!
咄嗟に、オレは、ヤツの手を、拒んでいた。親切で留めてくれようとしたのだろうが、診察以外で、触られたくなかった。けれど、いくらなんでも、手を叩いたのは、まずかったろう。叩いたうえに、まるで襲われそうになったとでもいいたげに、喉もとの布を掴んで逃げ腰な体勢になっている自分に、我に返った。
〔わ、りぃ〕
恐る恐る視線を助手へと移せば、オレに叩かれた手を、呆然と見てる。
〔ごめん〕
通じはしないだろうが、声にせずにはいられなかった。
21:00 2005/01/30―16:00 2005/01/31
漣遠視点だと思い込んでたら、漣遠がらみの話でしたね。
浅野くんは、壊れつつあります。
少しずつ、快感感じるようにはなってると思うんだけど、それが逆にショックだったりしそうだよね。最初が、痛いってだけだったと思うので、突然それに快感が~なんてなったら、混乱してしまいそうです。
魚里の中の浅野くんは、どうもこうも、はかなげなお姫さまですxx う~ん。もちっと強くならんと。
この後、漣遠がどう出るかで、悩んでるんでした。
パターンとしては、ふたつほど。
1、大岡越前の捕物みたいな感じ。―――どんなんや。奥さんを人質に取られて、盗賊の首領か何かを牢から解放しろって脅迫されるパターンね。だとすると、漣遠は、盗賊のナンバー2あたりになりそうだ。
2、もうただ、可哀想に思って、逃がしてやる。―――命がけだな。漣遠。浅野くんに惚れたか? 理由は? なぞ。なんつーか、フェロモン出てるんかも知れん。こっちになると、『狂恋』と時間軸が同じになります。
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