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時間配分は難しく
 いつもご来訪ありがとうございます。

 『呼ぶ声』と『罪深き琥珀の月』(未掲載)を頭の中で転がしていた所、新たな掌編とも言えるような話がわいてきたため、フリーズ中の魚里ですxx
 ダークなノリの短い話です。
 ただ、怪異なのか人間の怖さなのか、両方が絡む話なのか、我ながら~何が書きたいのか理解しがたいなぁと眉間に皺が寄ってしまってます。
 ファンタジーと言いながら、どこがファンタジーやねんと自分で突っ込みを入れたくなるような話とか。
 ロマンティックを目指しながら、斜めに走ってしまう話とか。
 結局、魚里は、メジャー方面を目指すと玉砕なんだなぁというのしか判っておりません。

 困ったもんです。

 それは、読書傾向にも現れているようで、

 まぁ、ご大層なものじゃないんですけど。
 BLをサイトで読んでると、いろんなカテゴリー別のランキングからお邪魔するときというのが往々にしてある訳ですが。
 非王道なんですね~ついつい。
 こう、メジャー方面を突っ走ってる主人公より、マイナー方面をうじうじとというかさっぱりキッパリ平凡をって方面が好きみたいで。それでもって、シビアな内容がいいなぁとうろうろしてるんですが、ないんですね。というか、シビアなのはほぼ網羅し尽くしているらしいxx 魚里って………。


**** こんな感じなんですが~。今までにもこういうの書いてるよね。



 燃え上がる炎は、貪婪にすべてを飲み込もうと数知れぬ舌をひらめかせつづけている。

 黒や白の煙が、既に室内に充満し、そこに残るものはいないだろうことを予測させた。

 しかし。

 予測は覆される。

 熱に炙られ今にも焦げてなくなろうとする床の上に倒れ伏している者の背中が見える。

 既に事切れているだろう均整のとれたからだのラインは、男のものだ。

 身体の下に何かを抱き守るかのような体勢で、ただ炎に飲み込まれてゆこうとしていた。

 男が身体の下に何を守ろうとしているのか、熱風にあおられる褐色の髪からおそらくはひとだろうことが推し量れるのみである。

 未だ奇跡的に炎の魔手から逃れられていた男の顔には、どこか満足そうな笑みが刷かれている。しかし、それも、時間の問題だったろう。魔の手は既に男の身体の大部分を燃やし尽くしていた。





「なんでっ! どうしてっ!」

 絶望混じりの叫び声だった。

「煩い」

 まだ少年の域を出ない褐色の髪の若者が涙声で首を振るのを一喝したのは、鋭い目元がその内面を如実に物語っているだろう、壮年の男だった。

 男の鋭い一声に若者の癇癪じみた叫びがとまる。

 取って代わったのは、怯え故とわかる全身の震えだった。

 黒檀に上質の布を張った椅子に悠然と腰を下ろしたまま、男は、若者を見上げる。

 それを、まるで今にも沼から這い上がってくる爬虫類ででもあるかのように、若者は、全身を緊張させて男の次の動きを警戒するのだ。しかし、男の視線の強さに堪えられないのか、若者の凡庸な褐色の瞳が、男の切れ長の黒瞳を避けるかの要に逸らされた。

 男の口角が引き攣れるかのようにかすかな笑いを形作る。

 視線を外した方が負けなのは、どの生き物にも言えることだというのに……と、まるでそう言いたげな呆れた風情で、それでいて暗黙のうちに自身が勝敗を決したのを意識しない若者を哀れむかのように、男の利き腕がまさに爬虫類めいた素早さでひらめく。

 室内の薄暗さに溶け込むかのような泥大島の紬の袖から、筋張った腕が垣間見えた。

「っ!」

 若者の喉から、悲鳴になりきらない衝撃がただほとばしる。

 腕を掴む男の力に、男の招きを拒みつづけた七日間が無に帰すのを、若者は、まざまざと感じていた。

 まるで水中に引きずり込もうとする大型の爬虫類のような動きに無駄はない。男は若者の抵抗をものともせずに、床の上に組み伏せた。





 二十畳ほどの室内には和洋の別なく部屋の主の趣味が取り込まれ、落ち着いた風情をかもしている。

 見るものが見れば地味だと感じかねないほどの色調の中、時折、螺鈿細工に使われた貝や貴石の類いが障子越しの光を鈍く宿す。

 しかし。

 どれほど居心地よく設えられていようとも、ここは、牢獄だった。

 障子を開ければ、そこには牢獄の証のように鉄の格子がその存在感を見せつけている。

 ここは、広大な敷地を誇る屋敷の一角を占める土蔵の中なのだ。

 男が何故ここに閉ざされているのか、若者はその身を以て、理解していた。

 自分がこの男にとって、何なのかも。

 自分にとってこの男が何なのか。それがふと思い浮かんでくるたびに、気が狂いそうになった。

 なるだけで、決して狂えはしなかったが。

 狂っていた方が幸せなのには違いない。

 けれども。

 実際に狂っているのは、この男の方なのだ。

 残酷な遊戯を好む、この半ば狂った男。

 この男の生け贄となった自分を思い出すたびに、若者は、こみあげてくる吐き気に苛まれるのだった。

 なぜなら。

 母親が違うとはいえ、この男と自分とは、実の兄弟なのだからである。

 老いらくの恋に狂った父が、母を攫うようにして囲い込み、そうして自分がうまれた。

 この地方一の分限者である一族の当主に逆らうものはいず、そうして母はいつしか大家の当主夫人の座におさまった。

 ただ、母にとって、自分は苦く暗い期間の証なのだろう。

 母の愛情を感じることは、きわめて稀だった。

 まだ幼かった若者が、妹を可愛がる母の姿に悲嘆に暮れて母屋を抜け出しさまよった。

 居場所などないのだと、幼い心に絶望を宿した。

 絶望は涙になり、涙は嗚咽を呼んだ。

 そんな自分に、男は声をかけたのだ。

 迷い込んだ庭の奥、洋館である母屋とは趣の違う、海鼠壁に蔦が這う、土蔵の二階の窓から。

 自分の泣き声に興味を惹かれたのだと、男は言った。

 その頭の中では、すでに残酷な遊戯が組み立てられていたのだろうが。

 判るはずもなかった。

 男は囚われ人ではあったが、牢の中では、王だった。彼に忠実な老爺と老婆を従えただけの、孤独きわまりない。そうして、また、危険きわまりない。



 ともかく………と、若者は回想する。

 自分は、肉親の愛情に飢えていたのだと。

 多忙な父とは滅多に顔を合わせることもない。

 跡取りは既に決まっている。若者より二十も歳上の兄がいるのだ。彼が、男の弟だと知ったのはいつだっただろう。

 父にとっても、母にとっても、自分はいてもいない、どうでもよい存在に過ぎないのだ。

 幼い頃の自分にとって、もちろんふたりが世界のすべてだった。

 あの日、男の使いだと言う者が父を訊ねて来るまで、父は実際自分になど感心はなかったのに違いない。

 若者は男の使いを知っていた。男が名前を呼んでいたが、覚える気もなかったせいか、聞く度に忘れていた。どちらにしても、名前を覚えるひつようなどありはしなかったのだ。男は若者が男に声をかけることを嫌っていたからである。
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