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in the soup 25回目
 いつもご来訪ありがとうございます♪

 24回目とは違って、ディープな25回目です。ご注意ください。

*****


「子供でも平気であけているだろう」

 そんなことを言われても、嫌なものは嫌なのだ。

 口には出せないが、なにが嫌と言って、この男にされると考えただけで、心臓が捻り潰されるかのように痛むのだ。

「これを我慢してつけるか、首輪をつけるか――だ。選べ」

「くびわ…………」

 思いもよらない単語を、郁也は反芻していた。

「首輪がいいのか」

 昇紘の声に、我に返る。

「ち、ちがう」

 息を吐いて、昇紘が声の調子を落とした。

「ここに滞在する間、どちらかをつけると言うのなら、外に出してやろうと言うのだ」

「ほ、ほんとにっ」

 脊髄反射のようなすばやい反応に、昇紘の頬が引き連れるような笑みを描く。

「せっかくの保養地だ。そのかわり、決して逃げようとはするな」

 きついまなざしに、郁也が瞬時にして青ざめる。しかし、そのまなざしは、これまで昇紘が見たことがないほどきらめいていた。

 何度もうなづきを繰り返す郁也に、

「それで、どっちを選ぶ」

 昇紘が畳み掛ける。

「ピ、アス」

「いいだろう」

 こっちだ。

 ソファの上、昇紘が腰を下ろす隣に郁也の手を引いた。

「そんなに震えて私の熱を煽るな。今日はお前を抱くつもりはないのだからな」

「ほ、ほんとに?」

「ついたばかりだ。疲れているだろう」

 耳朶を手に器具をあてがおうとする昇紘の思いもよらない労りのこもったような声が、近い。

「抵抗するな。ピアスをつけるだけだろう」

 反射的に顔をよじろうとする郁也に、昇紘が小さく舌うちをする。

 それだけで、郁也が大きく震えた。

「待っていろ」

 立ち上がった昇紘が部屋を出て行く。

 それをぼんやりと見送りながら、郁也は深い息を吐き出していた。

 小刻みな震えは止まらない。

 血が下がってしまったような錯覚もある。

 外に出してもらえると言うのなら、我慢できる。

 そう思ったのに。

 昇紘が傍にいるというだけで、その手がからだに触れているというだけで、全身で拒絶してしまうのだ。

 怖くてたまらないのだ。

 今はまだ比較的穏やかだが、昇紘の地雷を、いつ踏んでしまうかわからない。そんな不安がある。

 あの男の逆鱗に触れようものなら、何をされるかわからない。

 外出できるというのも、駄目になるかもしれないのだ。

 外に出たい。

 もう逃げようとは思わない。

 逃げれば、父の身に何が起きるかわからない。この国と故郷の間にどれだけの距離があっても、あの男には問題にはならないに違いない。やると言ったら、やってのけるだろう。

 もう、自分のことは諦めた。

 残されているのは、ただ、絶望だけだ。

 それと、恐怖と。

 なさけない。

 男なのに。

 英語だけじゃなくしっかり語学を身につけて、将来はプロの通訳になるのが夢だった。

 条件がいいからと面接を受けなければ。こんな目に合うことはなかっただろう。

 セックスなんか痛いだけだ。

 セックスが気持ちいいなんて、嘘だ。

 からだは機械的に反応を返すけど、それが気持ちいいと思ったことなんかない。

 ただ、苦しいだけだった。

 痛いだけだ。

 気持ちが悪いだけなんだ。

 セックスなんかしたくない。

 なのに、あの男が自分に求めているのは、それで。

 自分の存在意義というのが、それだけみたいに思えてくるのだ。

「ばかみたいだ………」

 つぶやいて、郁也は肘掛に顔を伏せた。

 酷く長い時間待たされたように感じたが、実はそんなに経ってはいなかったのだろう。

 昇紘は、エンリケを連れていた。

 既に説明は終えているのだろう。

「え?」

 昇紘はソファに腰を下ろし、郁也を抱き寄せた。

「やだっ」

 思わず口を突いて出た拒絶のことばに、昇紘が郁也を膝の間に抱きかかえきつく拘束する。

「やれ」

 震える郁也の薄い耳朶をエンリケの冷たい指先が摘んだ。

 刹那、郁也のくちびるから、自身意識してはいないだろう深い吐息がこぼれた。

 そうして、震えが止む。

 ガシャン――

 大きな音がして、耳朶に熱い痛みが走った。

 そうして、もう一度同じことが繰り返される。

 終わった。

 郁也が肩で息をついた。

 ジンジンとした痛みと熱を耳に感じる。

 立ち上がろうとしたときだった。

「えっ?」

 手首をきつく鷲掴まれた。

「ひっ」

 郁也の喉が鳴る。

 疼く耳朶を昇紘のくちびるが、挟み込んだのだ。

「なんでっ」

 エンリケがまだそこにいる。

「なにがだ」

 昇紘の平坦な声に、郁也は気づかない。

「今日はしないって言った」

 涙がこみあげてくる。

「お前が私の熱を煽るからだ」

 顔を覗き込まれて、その黒い瞳の奥に、欲望と何故なのかわからない苛立ちのようなものを見出したような気がして、郁也の背中が逆毛立った。

「煽ってなんか、ないっ」

 涙がこみあげてきた。

「うそつきっ」

 勢いに任せて叫んだ刹那、頬が鳴った。

「私は裏切りは許さない」

 そうだな、エンリケ。

「はい。ボス」

「私を裏切ったものがどうなってきたか、お前は知っているな」

「はい」

 郁也は、呆然と二人のやり取りを見ていた。

 熱を持った頬に、涙が冷たい軌跡を描く。

「エンリケ、そこに立っていろ」

 昇紘の言葉の意味を郁也が把握するまでに、暫くかかった。

 理解した途端、逃げようと、もがく。

 昇紘から遠ざかろうと、からだをよじらせた。

 しかし、郁也は昇紘にすっぽりと抱えられているのだ。

 逃げられるような隙などもとよりありはしない。

「い、いやだっ」

 昇紘のくちびるや歯や舌が、耳朶を舐め舐る。

 昇紘の掌が、胸元を這う。

 昇紘の手が、郁也の顎を支えている。

 郁也の腰に当るのは、間違いなく、昇紘の欲望の滾りだった。

 拒絶を繰り返す郁也を、昇紘は無言のまま、エンリケの目の前で蹂躙しつくしたのである。


***** ということで、オジサン~~~なにやってるんですかっ! 溜息。きっと次はオジサンのターンだな。ほんっとに、いい年こいて、墓穴掘りなんだから。
 少しでも楽しんでくださると嬉しいです。
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