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in the soup 20回目
 拍手、コメント、ご来訪、いつもありがとうございます。とっても嬉しいです。

 今日は、サバンナキャットの可愛い映像を見つけてきたので、アップしておきます。
 「ドツボ」の20回目はこの後でvv


 これだけ大きなニャン子も可愛いですよね。首より頭が小さいから胴輪をしてるのかな? スカーレッツ・マジックとかって名前らしいですが。さて? 記憶違いかも。ですが、Tさん好きの魚里はちょっとうっとりvv
 サバンナキャットと砂漠猫は別物ですよね。混同してしまってましたxx 

 さて、以下、20回目です。苦手な方はもちろんスルーでvv
 郁也クンはドツボもいいところです。臨界点か限界点か。
 オジサンが微妙にMっぽいような気がしないでもないですが。ま、ドSなのは変わりませんけどねxx
 では、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
 アメリカの戸籍に関しては一応ざっと調べました。うん。

*****






「郁也さん」

 エンリケの呼びかけに、反応はなかった。

 先日仕事の合間をぬうようにして時間を作った昇紘が来てから五日が過ぎている。以来、少年は魂が抜けたようになってしまっていた。

 あれほど外の空気を吸いたがっていた少年は、今ではただベッドの上に横になったまま動こうともしない。なのに、痛々しいほどに痩せた両の手首はベッドの両サイドにおのおのが縛り付けられている。その上、口枷を噛ませられてまでいるのだ。

 なぜなら。

 ただでさえ細っていた食欲は少年からはますます失せ、今朝からは点滴で栄養を直に摂らされていた。その点滴の針が血管に刺されたとき、それまで何も聞いていないように見えていた少年は、腕のチューブを乱暴に引き抜いたのだ。

 慌てた看護師が新たなチューブを用意し少年の腕に突き立てようとするが、弱ったようすからは思いもかけない激しさで暴れつづけた。野生の獣のような唸りを上げながら、全身で栄養剤を拒絶する。その両の瞳からはとめどない涙があふれ出し、頬を濡らしていた。

 しかし、所詮、弱りきった少年が体力勝負の看護師に叶うはずもない。舌打ち一つするなり看護師はポケットから取り出した包帯で片方ずつの手首を縛め、チューブを抜くことができないようにしたのだった。

 針が腕に刺さる際に少年の目にたたえられた光が絶望だということを、エンリケは見取っていた。

 その瞬間、少年の望みをエンリケは間違いなく理解した。

 舌を噛もうとした少年に、口枷を噛ませ、看護師は、栄養剤のほかに鎮静剤も処方して出て行った。

 青ざめた顔の中、褐色の瞳がただ天井を見上げるばかりだ。

 あの日、タイミング悪く少年が昇紘の計画の総てを知ったということを、エンリケは聞かされていた。

 まさか父親を偶然見かけるなど、昇紘の計画には含まれてなどいなかったろう。

 悪魔―――と、少年が吐き出すようにして言った最後の言葉をエンリケは脳裏から追い出すことができずにいる。

 そろそろ戻らなければと昇紘を促すために病室に戻ったエンリケは、まるで狂ったかのように少年を犯す昇紘を見てその場に凍りついた。

 クツクツと押し殺した笑い声が、少年の悲鳴とともに、エンリケの耳に残っている。

 なにもあのタイミングで。

 ボスがこの少年に執着していることなどは、重々承知している。

 この少年を取り込むために何を画策し、実行に移したか。

 実際に動いたのは、自分と直属の数名だったから、知らないはずもない。

 自分達は、ボスの命令とはいえ、浅野郁也という存在を抹殺したのだ。

 その上で少年の身分証を偽造し、ボスは彼を養子としたのだった。

 それを、ボスはあの最中に少年に教えたという。

 それがどれほどの衝撃を彼に与えたか。

 今の彼のありさまを見れば、想像するまでもない。

「かわいそうに………」

 少年のばさばさに乱れた前髪を手櫛で掻きあげてやりながら、エンリケはつぶやいた。

 思いもよらない自分の言葉に、目を見開く。

 目を眇め、肩を竦めた。

 少年のかさかさに乾いたくちびるから、呼気が忙しなく繰り返されている。

 喉に絡んだその音がなければ、胸が上下していなければ、少年が死んだと思ったかもしれない。

 事実、少年にはなにひとつとしてこんな仕打ちを受けるいわれなどありはしないのだ。

 少年から総てを奪い取り、望んでもいないものを与える。

 いや、違う。

 与えているのではない。

 押し付けたのだ。

 ボスの養子になることなど、少年は望みすらしなかった。

 少年の望みはただ、ボスから逃れることだけなのだ。

 いまやその望みすら絶たれて、総てを拒否することを選んだのだろう。

 生きることすら拒否して、望むことは無に帰すことか。

 衰弱の果ての死を望んだのに違いない。

 しかし、それさえも少年には許されない。

 エンリケは念のためにと、少年の周りから自身を傷つけるに足るようなものをすべて排除させたのだった。







「退院が延びたか」

 エンリケの報告を聞きいて、昇紘の書類をめくっていた手がふと止まった。

「はい」

 肯う声に、

「しかたあるまい」

 肩を竦める。

 あの日の行動がどういう結果を引き起こすかなど、わかりきっていることだったのだ。

 しかし、衝動を抑えることはできなかった。

 自分自身を殺せと言う郁也が憎かったのだ。

 父親を守るために死を選ぶ郁也が。

 まさかあのタイミングで郁也の父親が病院に来ているとは思わなかった。

 郁也の背中が彼の感情のすべてを物語っていた。

 帰りたいのだと。

 今にも自分から離れてゆこうとする郁也を、引き止めずにいることができるはずもない。だから、無理に抱え上げたのだ。

 決して好きにならないと頑なに言い募る郁也に、さまざまな感情が渦巻いた。

 真実、郁也の父親を殺してしまいたかった。

 そうすれば、この頑なな少年はどうするだろう。

 今以上に自分を憎むだろうこと、想像に難くはない。

 どうすれば、この腕の中に完全に取り込むことができるのだろう。

 脅しに屈した少年のまだ細い首が、青白く強張っている。

 その褐色の瞳が自分以外を見ているという事実に、ふつりと怒りが湧き上がる。

『別れは済んだか』

 自分を見ろとは、言えなかった。

 郁也の体臭が鼻腔を満たしたと感じた刹那、肩に痛みが走る。

 噛みやぶろうとするかのように、引き千切ろうとするかのように、肩に郁也の歯と爪とが食い込んでくる。

 その痛みを心地好いと感じた。

 この痛みは、郁也が自分に与えるものだったからだ。

 この瞬間、郁也の意識は自分に向いている。

 それを思えばこそ、笑いがこぼれるのを止めることはできなかった。




***** 以上ですvv
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