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2012/10
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ブラコンなんです。
 いつもご来訪ありがとうございます♪

 ええと、タイトル。
 別段魚里がブラコンなわけじゃないですよ。
 兄弟はおりませんので。妹はいるけどね。

 所謂ブラコンものを書こうかなと。萌えてたんです。
 初心に戻ろうってことですが。
 兄さん兄さんって、いい歳した弟が兄に懐きたくるって〜面白いし好きなんですよね。
 で、妄想を逞しくしておりましたら、あれ?
 また歪んだな。
 いいや、開き直っちゃえ。
 って、ことで、冒頭だけどうにか。
 以下お試しです。
 どうぞvv


****







「凶つ星が降り立った」

 しわがれた声が、闇の中小さくつぶやき、途絶えた。







 燃え盛る炎はクライマックスを迎えた。

 かつては瀟洒だったろう赤い煉瓦組の屋敷が音をたてて崩れ落ちる。

 見守る家人たちから悲痛な悲鳴があがった。







「にいさま」

 可愛らしい声が聞こえる。

「まって」

 声に応えて、少年が振り返った。

 視線の先には、可愛らしくもあどけない顔。

 きらきらと輝く紫紺のまなざしが、しかし、なにかちらりと歳に似つかわしくない光を宿して消えた。

 手を差し出す少年は五歳ほどだろうか。

 からだごと向きを変えようとして、少年は、バランスを崩しその場に頽れた。

「にいさまっ」

 駆け寄る三歳ほどの少年が、兄と呼んだ少年の顔を覗き込む。

「だいじょうぶ?」

 声に反応して、

「だいじょうぶだ」

と、少年の口が動いた。

 しかし、声は出ない。

 よくよく見やれば、襟ぐりの伸びきった肌着の隙間から、少年の首のなかばから下、左半身に大きなケロイド状の引き攣れを見ることができる。

「ごめんなさい。ユーベルのせいだ」

 天使のような顔を歪めて、少年が、涙を流す。

 なんどか失敗をくり返し立ち上がった少年が、慎重に腰を屈め、弟と視線を合わせた。

 漆黒の髪に覆われた頭を数度かるくなで、

「だいじょうぶだっていったろ」

と、もういちどゆっくりと口を動かした。

「だって、にいさまこんなにけがしてる。みんなユーベルをかばったせいだ」

 三歳にしてはしっかりとした口調で、しかし、まだ、涙がやむけはいはない。

 肩を竦めた少年は、弟の頬を両手でやわらかく挟むと、きゅうとばかりに片方を上に片方を下に動かした。

 天使のような少年の顔が、不自然に歪む。

「いひゃい」

 涙をたたえた目が大きく見開かれた。

「だいじょうぶだって、いったろ。もう、なきやめよ」

 ぱくぱくと動く兄のくちびるを読み、それですぐに泣きやむことができれば面倒はない。

 ちいさな手をぐーに握りしめ、目の下をこする。

「さあ。かえろう」

 ばさばさの茶色の髪の下、同色の瞳が眇められるようにして笑った。

「うんっ!」

 それを認めたユーベルが兄の手をぎゅうと握り締める。

 ゆっくりと、ふたりは、家に帰ってゆく。

 田畑で仕事をしている大人たちは、そんなふたりを見ることもない。しかし、その背には不自然な強張りを見て取ることができた。







「兄さま。散歩に行きますよ」

 長く伸ばした黒い髪を瞳と同じ紫紺の絹で束ね、ゆったりとしたドレープが美しい藤色のシャツの上に金の縁取りのある白いジャケットを重ね着しているすらりと丈高い青年の姿に、飴色の椅子に腰をかけていた若者はほんの少しだけ強張りをといた。
 
 しかし、窓辺の椅子から立ち上がる気配を見せない。

 それに、青年の整った顔が、すぐにはそれと知れない苛立ちを刻んだ。

「兄さま。もう、父様も母様も出立しましたよ。だいじょうぶ。兄さまを咎めるひとはいません」

 声に苛立ちを表わさないように気をつけながら、青年がゆっくりとくちびるを動かす。

 それに返すように、若者が首を左右に振った。

 顔を下げる。

 これでは、若者が青年のくちびるを読むことはできない。

 無造作に切りそろえられた若者の茶色の髪の隙間から、その耳の付け根の傷痕を見て取ることができる。

 両耳の付け根にあるそれが、若者から聴力を奪ったのは、かなり前のことだ。

 あのときも、兄は自分を庇ったのだ。

 青年の白い両手がぎりぎりと拳を握りしめる。

 いつもいつも、兄は、彼を庇い、そうして、なにかを失ってきた。

 まるで、兄が彼の犠牲ででもあるかのように。

 これ以上、兄からなにかを失わせたりはしない。

 これからは、兄に、総てを与えるのだ。

 そう。

 自分にはそれだけの力がある。

「あなたは、私の、私だけの星なのですよ。兄さま」

 兄には聞こえない声で、ユーベルはつぶやいた。






18:18 2012/10/24
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