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2009/03
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大吉
 十回目です。
 相変わらず短いです。

 コメントありがとうございました。
 レス、こちらで失礼します。
 面白かったですか? 少しでも楽しんでいただけたのなら、嬉しいです。




 いつの間にか、オレは、ひとごみから外れていた。

 無意識に避けて、こうなったらしい。

 不思議とひとの気配のない路地裏で、オレは、途方にくれていた。

 建物と建物の間ではあるらしいが、勝手口も窓も見当たらない。

 薄暗くまっすぐの、細い道だった。それでも、あちらこちらに脇道が見える。

 これ以上脇道に入りでもしたらどうなるだろう。いやな予想に、オレは、首を振った。

 ぼさっとしていないで、とにかく、元の道に戻らないと、ジュリオにもカルスタにも、迷惑がかかるに違いない。

 方向転換をした。

 そこで、オレは息を飲む羽目になったんだ。

 オレよりも頭ひとつ以上高い位置にある一対の灰色の目が、オレを見下ろしていたからだ。

 それが、まるで、喉元に当てられた白刃ででもあるかのような錯覚に、オレは、その場から駆け出したい衝動と必死になって戦っていた。

 カルスタは、オレを嫌ってるんだろうな。

 漠然とした感覚はあった。

 それが、抜き身の刃とも思えるほどの嫌悪だったなんて、咄嗟に信じられなくて、オレは、どうしたらいいのか、わからなくなったんだ。

 カルスタに嫌われるようなことをやった覚えなんかない。

 だいたい、喋ったことさえ、数えるくらいなんだ。

 薄ら寒い沈黙を破ったのは、

「兄上、こんなところにいらしたのですか」

 ジュリオの明るい声だった。

「カルスタ。兄上を見つけたらすぐに戻ってくれないと。時間に遅れるだろ」

 そういうジュリオの手には、花束がひとつ、それときれいに包まれた小さな包みが握られている。

 謝罪を告げる硬い声を聞きながら、オレは、ジュリオに手を引っ張られて、そこに連れて行かれたんだ。



 そこは、町外れの広場らしいところだった。

 らしいというのは、今は大きな、しかし粗い造りの建物がひとつぽつんとあるからだ。

「ここは?」

「劇場です。といっても、王立劇場ではなく、町場の興行主が掛けるものですけどね」

 一緒にきますか?

 訊ねられて、オレはうなづいていた。

 慣れたようすで裏口から入ってゆくジュリオの後に、オレはついて行った。

 仕切られた小部屋に声を掛けて、ジュリオが入る。

 甘い化粧のにおいに、かすかな花のかおりがまじっていた。

 立ち上がってオレたちを、というより、ジュリオを出迎えたのは、ひとりの女性だった。

 二十歳は過ぎているに違いない。目鼻立ちの一つ一つが大きく印象的な、彼女は決して美女というのではなかったが、野性的なという表現がしっくりするだろう。

 恥ずかしいほど少ない布地のドレスは舞台衣装は、その女性らしい肢体を惜しげもなく強調している。

 赤く塗られたくちびるに、

「ジュードさま」

 蠱惑的な笑みが刻まれた。

 年の割には大人びて見えるとはいえ、ジュリオはまだ十四才なのに、ふたりはオレの見ている前で、濃厚なくちづけを交わすのだ。

 目のやり場に困るとは、このことだろう。

 オレって邪魔者。

 カルスタがドアの外で待っている理由がよくわかった。

 けど、だから、オレは、外に出るのがいやだった。嫌われてるって知ってるのに、隣で並んでなんかいられない。だから、オレはこの場で、真っ赤になってたんだ。

 背中は向けてたけどな。

「兄上。もういいですよ」

 笑いを含んだ声だった。

「カリー。僕の恋人です」

 ジュリオと同じくらいの背の高さのカリーの肩を抱いて、ジュリオが紹介する。

「こいびと?」

 衝撃――いや、びっくりっていうのが、しっくりくるか。

 名前すら本名を教えていないっていうのに、それでも、恋人なのか?

 そんな疑問もあった。

「カリー。僕の兄ですよ」

 にこやかなカリーは、

「いつも、ジュードさまにはよくしていただいていますの」

 今日は楽しんでいってくださいね。

 まぶしいばかりの歓迎だった。

 派手な舞台だった。

 もちろん、派手なばかりじゃない。

 観客を楽しませるつぼはすべて押さえているのだろう。

 客たちは、わき目も見ずに、舞台に食い入っていた。

 舞台の中央で、ひときわ人目を引くカリーは、まさに劇場を支配する女王だった。



 熱に当てられた気分だった。

 ぼーっとなって、何をしても身が入らない。

 陛下の目も、ジーンの目も、オレを見るたびに、いぶかしんでいるようだった。

 けど、

 なにがあった――

 聞かれても、オレにも何がどうしたって、わかってなかったんだ。

 いろいろ考えて、ジュリオに連れて行かれた劇場が原因だろうっては思ったんだけど。

 それの何がこんなに気もそぞろにしてしまうんだろう。

 カリー?

 ジュリオの恋人が?

 気に入ったんだろうか。

 好きになったんだろうか。

 弟の恋人を?

 そんなばかな。

 いくらなんでも。

 気になって、確かめたくて、次の休日、オレは、ひとりで城を抜け出したんだ。

 勇気が要った。

 オレは、ジュリオとは違うから、それとなく助けてくれる友人なんていない。

 だから、服装ひとつ替えるのも大変で。徒歩を覚悟した。

 朝早く、遠駆けしてくると侍従に告げて、出たんだ。

 お供を――って声が聞こえたけど、無視した。

 無視したことが、どんな騒ぎにつながるかなんて、考えてもなかった。



*********** ここまで。

 魚里自身、少々苦手なエピソードになりつつあるので、筆が進みません。
 最初はこうなる予定じゃなかったんですが。
 カリーさんが、ちょっと強烈だったのでしょうかね。魚里比率です。
 そろそろ、転――にさしかかれるかな。
 転だといいなぁ。


 え~と、小人閑居してなんとやらというわけじゃありませんが、朝早くから、知り合いが貸して下さったエンドレス~なんとかっていうコンサートのDVDを見ておりました。
 アイドル(だよね? 名前は挙げませんが、最近魚里の転んでる歌手の一人です)のコンサートは初体験なものですから、どうしようとうろたえつつ、見終えたという。
 いや、う~ん。
 ハムレットは無理があるだろう。リチャード三世も亡霊とはいえブロードウェイに現われるのはどうかと。服装も違和感ありすぎだし。―――多分、魚里の見方が変なんですよ。わかってますが。
 演じるのがというのではなく、脚本の関係というか。展開としちゃ変だと思う。
 使い古された台詞の羅列をまじめに喋る相手役に、同情を禁じえなくなりつつ。
 舞台だからどうしても喋りが大げさになるんだよなぁと、わかったふりをしつつ。
 それでもやっぱり、わざとらしさとオーバーアクション気味な演技は、魚里苦手だなとしみじみ。
 アイドルのコンサートは、魚里には向かないのね――と、納得したのでありました。
 でも、歌は好きですよ。
 歌と踊りはね。
 偉そうなコメントですな。失礼しました。



 で、まじめに、「王さまのお気に入り」を書こうと奮起して、これだけどうにか書けたんですが、筆が止まったのは苦手なエピソードなのと、もうひとつ。
 昇x浅の「悪夢」の続きに萌えてしまったためだったりします。
 「憑かれたもの」だったかなんだったか、自分が書いたSSのリスペクトに萌えちゃったんですね。あれはあれで独立した話でいいのですが。ワンエピソードだしね。あんな雰囲気で――と思って書き出したら、10kb越えました。あれ? 今日中に書上げてアップとか思ってたのに、出来そうもないです。明日アップできるといいなぁ。どうなんだろう? 明後日は用事あるしね。奮起だ、魚里!
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