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2009/01
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中吉
 今書いてる話のさわりだけアップ。
 う~ん。
 最初から、オチばればれの構成なんですけどね。

 今のところ、タイトルは、『王さまのお気に入り』です。

 やわらかそうな毛足の絨毯の上にある丈の低いテーブルやそれと対になっているすわり心地のよさそうなソファ、鮮やかな色彩と構図も美しい綴れ織りのかかる壁際には細やかな細工の飾り棚が置かれ、暖炉の火も惜しむことの無い薪を抱いて踊っている。神話の絵が淡い色彩で描かれた天井からは、鏡と研磨されカットされた水晶とを使って蝋燭の炎を反射させる大振りなシャンデリアがぶら下がる。

 すべての家具調度は、ここに暮らす者に対する細やかな心配りから配置されているだろう。しかし。一見して居心地のよさそうなこの部屋の窓には、すべて、外側から鉄格子が嵌められている。

 庭に出るための窓にもまた、無残にも無骨な格子でその出入りを戒められているのだ。

 今は開いたままになっている両開きのドアにも、同じことがいえる。何者かが打ち破ったドアの取っ手には、大きな錠が壊されないままぶら下がっていた。

 そうして。

 すべての家具に、調度に、飛び散っている赤黒いもの。

 それは、室内のすべてから、調和を奪い去っていた。

 毛足の長い絨毯の上に横たわる少年は、すでに、こときれている。

 細かな刺繍の施された光沢のある布は、主の血を吸い、少年の病的なまでに痩せたからだに張りついていた。

 少年の顔からは、不思議と苦痛は見受けられなかった。

 たとえるなら、すべての罪をようやく肩から下ろすことができるのだという、ようやく与えられた救いに安堵するかのような表情をたたえていた。

 自分を殺したものに対する恨みもつらみもありはしないのだとばかりに、かすかに持ち上がった両の口角がほのかな笑みさえもかたちづくっていたのである。

 音をたてることもなく一振りの刃から落ちたものが、少年のからだの中に戻るかのように、不健康な白さの肌の上を伝う。

「あにうえっ」

 呆然と立ち尽くしていた若者が、ふらりとその場に頽れた。

「なぜ、あなたがっ」

 サラリ――と、若者の銀の髪が、少年の額にかかる。

 もはや息絶えた少年の骸を膝に抱え上げる若者の瞳から、涙があふれ出した。

 それは、いまだにほのかなあたたかさを保つ少年の頬を、いつまでも濡らしつづけた。
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