fc2ブログ
2008/01
≪12  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31   02≫
本日二回目
 えとえと。2本ほどPCゲームをやっておりました。正月休み最終日になにやってんだ、魚里。

 両方とも18禁でして……1個は男女物もう1個はボーイズ物。
 『仁義なき乙女』と『紅い夜星々の囁きを聴け』っていうのです。前者はともかく、後者は2003年発売って言うもの。まぁ、買ったのは去年ですけどね。それでも充分古いですか? 要はないようですよねっ!

 『仁義なき~』――前にやりかけにしていた灰谷センセーをラストまで。どうやらハッピーエンドらしいです。もう少し続くかと思ってたら、恋人宣言をセンセーの今は亡き先輩の奥さんにして、エンディングでありました。ありゃ、あっけない。でも、まぁ、責任取れる大人のようだからいいですが、やっぱ、避妊具は使って欲しい魚里なのでした。←やっぱ突っ込みどころですよね。18禁では、お約束なのか? よく知らないからなぁ。
 でもって、もう1人かねてから攻略してみたかった朝生さん。メガネかけてるエリートやくざで、金が力というか、力こそ必要だって心閉ざしてるハンサムさん。ハッピーエンドではありましたが。途中、レ○プシーンもどきがありましたが。ラスト近く、朝生さんを慰めるためにからだを張る主人公。いきなり、というか、流れで、騎○位になりますか? いや、まだまだ初心者でしょうに………。ちょっと、というか、かなり魚里、退きましたよ。

 『紅い夜~』―――途中、主人公とそんな会話したシーンないのに吸血鬼だろう青年のせりふらしきものがいきなり出てくるのにちょっと拘ってしまって、途中で放り出してた魚里なのですが。わざわざCDを入れなくてもよかったので、ついvv ←なんちゅう理由やねんxx あ、愛がないなぁ。
 さてさて、庵野さんという民俗学の教授の復讐劇みたいなシナリオ限定になってしまいまして、ラストはバッドエンドなんですけど~~~ジュネとかじゃ、結構このパターンはハッピーエンドだろうみたいなエンディングだったので、あまり厭な気分にはならなかった魚里です。もっとも、レ○プシーンがけっこうありまして、からだからほだされる主人公が、なんか可愛いんだけど、さて? みたいな。
 イラストは、皆さん多分、男らしい感じで、主人公も、女っぽくないので、魚里的には、満足。声がないというのもいいのかもね。声付きゲームでも魚里、字を読んでるばかりで、あまり声は聴いてないからなぁ。うざいんだもん。演技してるから、テンポがゆっくりだしね。う~ん、魚里ってxx
 ただねぇ、主人公を自分がレ○プしたと、主人公の保護者(主人公の父ちゃんの部下ね)が知ったときの反応にちょっと、イラッvv 自分が丹精こめて育てた花を手折られて~~って、それ、ほとんど告白なのに、理性で抑えますかっ! 魚里的にはそこで一度押し倒しちゃえって、 鬼畜なこと考えちゃったんですけど。うん。それがきっかけで庵野センセヘノ思いに気づくてーのもありがちだけど面白くないか―――なんてね。まぁ、保護者さんは、できた男性ということなんでしょうけどvv ストイックでそれはそれでいい男ですけどね。って、どっちやねん魚里。
 ともあれ、後半っつーか三分の一過ぎたあたりから吸血鬼って言う存在は、センセーの研究課題とセンセーの拘った絵と、偶然主人公が手にした小説の中だけになるので、ちょっと寂しかったな。
 どこで選択間違ったんだか。
 ともあれ、このゲーム、魚里的に、初めてのお気に入りになりましたvv
スポンサーサイト



『悪魔と踊れ』リメイクプラスアルファ(ろ、6回目?)
 ともあれ、100枚越えは必至になってしまいましたxx 今の時点で90枚越えてしまってるので。いや、まだ越えてなかったんですがxx まぁ、最近、書くの遅くなってるから、このペースなんですけどねぇ。あまり長い話にするつもりなんかなかったんだけどなぁ。
 ラウルは眠り姫だからしかたないとして、あまりに名無しの魔王様の登場がないものですから、バランスをと考えて少しずつ出番を切ったり貼ったりしてたのですが。やっぱ、魔王様なだけあるような。結構、他の人を喰ってしまってる気がして、頭を抱えています。まぁ、ユージーンにしてもマイペースだし、あまり気にはしないでしょうけど。―――このふたりの元キャラ、姓名判断でまったく同じ結果だったんですよね。さすがなんでしょうか?
 ―――しかし、魔王様をあまり弄ると、まるっとちがう話になってしまいそうで、戦々恐々。ただでさえ話が、冗漫になってる。
 こりは~~~新しい風を入れんと煮詰まるというパターンかいなxx
 どうしようかな。
 最初は登場さそうかと考えてたキャラを一人、消してはいるんですが。
 悩む。
 いつまでたっても終わらん。
 魚里は、短編向きなんだぁ~~~~! はぁ。最近自覚してるだけに、書き上げられるかが、心配な魚里なのでした。

 途中までブログにアップしようかと思ってたのですけど、5回目が魚里的には結構切り張りしたりしてるので、も一度リメイクでアップしないとわけがわからんかなという心配もあって、アップに二の足踏んでおります。ど、どうしましょう。
 アップしたほうがいいですか?
 うううう。
 しとこうかな。
 魚里的にも、更新がないので罪悪感があるんですよね~。重なるところは、困ったやつだで、堪忍してください。
 ということで、以下、『悪魔と踊れ』リメイクプラスアルファですxx 少々長めのアップですが。
 苦笑いしつつでも楽しんでいただけると嬉しいです。



「司教をまだあのままにしておくつもりなんですか」

 ジュールの口調からは、穏やかさは微塵も感じられない。

「不服でしょうね」

「もちろん」

 この、人ならざる者には、自分の胸のうちなどわかっているにちがいない。そうして、ラウルの胸のうちだとて。なのに、なぜ。

 司教に穏やかに接するのに、自分がどれだけの苦痛を味わっているか。時折触れてくる手に、嫌悪と憎悪とが混ざり合って、吐き気がこみあげてくるのをこらえることが、どんなに辛いか。この手で縊り殺してやりたい欲望を抑えるのに、どれだけの自制心を必要としていることか。すべてわかっていながら、どうして、

「なぜ、そんなに平然としているんです」

 デキャンタからワインをゴブレットに注ぎ、手渡す。

 白い手が、優雅にゴブレットを受け取る。

「ラウルを愛しているんでしょう」

 喉が反り、滑らかなカーブを描いた。喉仏がひとつ、ゆっくりと、震えるように上下する。

「なによりも」

 琥珀のまなざしが、かすかに、潤んでいる。

「なら、いったい。なにを考えているんです」

「待っているのですよ」

「なにを」

「司教に対する全ての恨みが揃うのを」

 そのことばに、ジュールが、目を見開いた。

「揃ったときにこそ、君たちの………いいえ。私の念願がかなうときですから」

 単に死なせるだけでは、溜飲は下がらないでしょう?

 歌うように楽しげに告げる城主、ユージーンの言葉に、ジュールは、かすかに青ざめた。






 
 そんなに自分を抑えるのがつらいのなら、司教の世話はほかのものにまかせましょうか。

 ユージーンのことばに首を横に振ったのは、ジュール自身だった。それでも、足どりが重くなるのは仕方がない。

 相手は、何よりも憎んでやまない相手なのだ。

 いっそ、ユージーンに甘えればよかったのかもしれない。

 手が震える。

 全身が震えてならない。

 それらを抑えて、へらりとした笑いを顔に貼り付けるのは、結構、きつい。

 けれど、あまりにも憎すぎて、誰かに任せることも、できないのだ。

 エメラルドの中に閉じ込められたような一角獣をみやる。タピスリーの中で、色とりどりの花々と黄色い蕊が、真っ白い伝説の獣を彩っている。

 ゆらゆらとかすかに揺れるタピスリーから、愛しいひとたちの悲鳴が怨嗟の啜り泣きが、聞こえてくる。

 憎い。

 辛い。

 痛い。

 寒い。

 熱い。

 苦しい。

 助けて。

 助けて。

 助けて。

「もうすぐだから………」

 もうすぐ、その苦しみから、解放してもらえるから。

 何十年もかかって、それでも少しも癒えることがない無限の苦痛は、まさに地獄以外のなにものでもない。

 母に姉、それに、幼い妹。

 血の繋がってはいない、それでも、かけがえのない、家族。

 彼女たちを救うことができるなら、なにをしても、なにをされても、かまわない。

 だから、自分は、悪魔に魂を売り渡した。

 あんなにも、厭いつづけた、あの存在に。

 悪魔は、昨夜もジュールの元を訪れたのだ。



 ジュールの脳裏に、あの、黒々とした眸が過ぎって消えた。



 司祭が罠にかかったあの夜。

 司祭も眠り、城が静まり返る。

 ジュールは、自分の部屋のベッドの中で、眠れずにいた。

 やっと、復讐できるのだ。

 あの首を絞めてやりたい。

 ナイフで切り刻んでやりたい。

 しかし。ユージーンは、そんな即物的な復讐をもくろんではいないのだろう。

 秀麗な白い顔が闇の中に浮かび上がる。

 いったいなにを考えているんだ――――――と、独り後ちた時だった。

 蝋燭の明りがいっせいに灯った。

 オレンジ色の光が、室内を照らし出す。

 そこに、闇を従えたものを見出して、ジュールは、飛び起きた。

 心臓が、驚きに、激しく喚きたてていた。

『復讐を遂げるまでは自由にしてもかまわない。確かにそうは言った』

 闇よりも暗い眸が、覗きこんできた。

 穏やかな口調とは裏腹に、内に火を宿す石炭のような暗い眸に、全身が強張りつく。

『ジュール』

 硬質な声音に名を呼ばれて、慄く。

『このからだを、誰にも触れさせるな』

 切って捨てるような口調に、全身に火が散る。そんな錯覚があった。

 見ていたのか。

 司祭に媚びて見せたのを。

『おまえの純潔は、私のものだろう』

『っ!』

 強張りついた全身を抱きしめられ、耳元でささやかれた。

『純潔だけではない。存在の全て、魂の一片まで、私のものだろう』

 ベッドに押し倒されるのではないかというその不安に、男の胸元に手を突っ張った。

 首を激しく左右に振る。

『今はっ、まだっ、オレの望みは叶ってないっ』

 望みを叶えてくれるなら、おまえのものになってやる――――と、あの時、死に瀕していたあのときに、自分は心の中で叫んだ。

『だから、まだだ』

 必死で睨みつけた。

 と、

『いいだろう』

 思いも寄らない穏やかな笑みに、ジュールの目が、見開かれる。

『だが、これくらいは、かまわないだろう』

 呆然としていたジュールのくちびるに、男のくちびるが、触れてきた。

 優しいといっていいほどの、やわらかなタッチに、ジュールはただ、その場で動けずにいた。

『おまえが私のものだということだけは、肝に銘じておけ』

 打って変わった硬質な声音が、耳を打った。

 我に返って見返せば、いつもの厳しい顔が、見下ろしている。

 ―――――他人に、触れさせるな。

 それさえ守れるなら、私は、黙って、成り行きを見守っているだけにしよう。

 そう言うと、悪魔は、今度はジュールのくちびるを堪能するかのように深いくちづけを落として、去っていったのだ。



 思い出す。



 悪魔と最初に出会ったのは、いつだったろう。

 ラウルが、ユージーンと出会うよりは、まえのことだ。

 そう。

 ジュールは、ラウルがユージーンと出会ったときのことを、知っている。

 羨ましいと、思ったものだ。

 穏やかそうな優しそうな、美しい男が、ただ、ラウルひとりを欲しいと思っている。そう感じることが出来た、あの、ふたりの出会いのシーンをジュールは、ぽつんと離れたところから見ていたのだ。

 顧みて、自分の孤独を、痛いくらいに感じた。

 行く先々で、ジュールがどんなに好きになっても、最後の最後、彼女たちは、去っていった。

 流れ者の生活は自分には無理だから―――――と、彼女たちは、首を横に振る。

 くちづけだけを残して、彼女たちは去ってゆくのだ。

『どうして』

 細い手首を握り締めて、掻き口説いた。

 ジュールよりも二つ三つ年上の彼女は、口許に優しいばかりの笑みをたたえて、

『あなたは、好き。けれど、祭が終われば婚約者と結婚するのよ』

 どこか遠くを見る青い眸が、ただの遊びだったのだと、残酷に告げた。

 するりと抜け出す白い手に、追いすがる心は、すでに灰のようだった。

 祭の喧騒は遠く、気づかずに背を向けて、ジュールは、町外れの川岸にぽつりと腰を下ろした。

『あ~あ』

 腕で涙を拭い去る。

 悔しかった。

 寂しかった。

 今だけは誰とも顔を合わせたくはなかった。

 だから、帽子を目深に下ろした。

 草の上に、背中から寝転がる。

 五月の夕風が、ほんの少し冷たさを増していた。

 魚が、水面を跳ねる。

 小鳥が歌い、虫たちの羽音が忙しない。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。

『不実な女に振られたくらいで、屍になってもいいとでも思っているのか』

 酔狂なことだ。

 低い声だった。

 耳に残る低い声が、底に嘲笑をにじませて、耳に届く。

『ほっといてく……れ……………』

 帽子をずらせて、片目で声の主をねめつけようとして、ジュールは、大きく震えた。

 暗い緑のローブをまとった男がひとり、ジュールを見下ろしていたのだ。

 そのまなざしの強さに、ジュールの全身に鳥肌が立つ。

 男がそこにいるだけで、闇が、深さを増したような気がした。

 人間じゃない――と、そう思ったものの、逃げようという気には不思議とならなかった。



 少女の背中が去ってゆく。

 伸ばした手が、虚しく、空を掻いた。

 低い笑い声が、響いた。

 耳に届くその声に、ジュールの背中に、粟が立つ。

 冷や汗が、滴り落ちる。

 震えが、止まらない。

 見るまでもない。

 闇をまとったような、いや、違う。闇を従えたような男がひとり、背後に佇んでいるのだ。

『振られたな――――』

 面白そうに嘯きながらも、その目は、決して笑ってはいないだろう。

『いいかげん、私を受け入れればどうだ』

 言われて、ジュールは首を振る。かたくなに背中を向けたままで。

『誰がっ』

 顔も見ずに、吐き捨てた。

 背中で、全身で、ひしひしと感じる男の存在が、ひときわ強くなる。

 押されるように一歩踏み出そうとしたその時、ジュールの肩を男が掴んだ。

 白い、力仕事とは無縁だろう手を、ジュールは振り払うことすら出来ず、男と対峙させられていた。

『私の我慢にも、限界がある』

 顔をあお向けられて、目を覗き込まれた。

 黒曜石よりも黒い瞳のその奥に、赤い熾き火が見えるような気がした。

『このくちびるを、私以外のものに、触れさせたのか』

 親指の腹でなぞられて、背中に震えが走る。

『イヤダ――』

『オレは、あんたのものじゃないっ!』

 叫んで、突き放す。

『いいや』

 いっそ穏やかに笑んで、男は、

『お前は、私のものだよ。私を魅せた刹那に、そう決まった』

 ジュールを絶望へと突き落とす。

 背中を這う男の手の感触が、ジュールを、慄かせる。

『違うっ!』

 どんなに首を振っても、拒否をしても、男には通じない。

『だいたい、オレが、いつ、あんたを魅せたっていうんだっ』

 少女たちに見せるようなやわらかな笑みのひとつも、男にみせたことはない。

 いつだって睨み付けるか、逸らせるか。もしくは、今のように、叫ぶばかりだ。

 全身で、拒絶している。

 なのに、この男は、いつの間にか、自分の近くに現われて、すべての抵抗を楽しむみたいに自分をからかっては、去ってゆくのだ。

『…………お前の存在そのものが、私を、魅せる』

 そう言うなり顔が近づいてきた。

 苦虫を噛んだような憮然とした表情が、思いもかけない甘さを帯びて、すぐ目の前に迫る。

『いやだっ』

 思わず目を奪われかけて、我に返った。

 ただでさえこの執着である。キスなどしようものなら、どうなるか。

 一度でも許してしまえば取り返しのつかないことになってしまいそうで、ジュールの背筋に怖気が生じた。

 押しのけるようにして男の腕の中から抜け出した。

 乱れた前髪をかきあげて、男の黒い瞳が、ジュールを見据えた。

『いいだろう………好きにするがいい。だが―――――――』

 ぞっとするほどの冷たさと同時に焼きつくそうとするかのような灼熱を男の眸に感じて、ジュールは、動くことすら出来なかった。

『おまえが、このくちびるで私を呼んだ時、そのときこそ、おまえのすべては私のものになると肝に銘じておけ』

 ―――おまえが私を魅せたのが縁(えにし)なら、私のものとなるのはおまえの宿命なのだと、覚えておくがいい。

 そう言って、男は、目の前から消えたのだ。

『呼ぶものか………』

 そう。

 ジュールは、そう思っていた。

 男があのときすでに未来を見越していただなどと、どうして、考えることが出来ただろう。
 
 それに思い至ったのは、残酷な拷問の果てに、こときれようとしていた、まさにそのときだった。

 苦痛と憎しみ、それに、死にゆくことの恐怖。

 自分たちの味わった苦痛など知らぬ顔をして、これから先も生きてゆくのだろう、神の僕を名乗る男たち。彼らに対する、どうしようもない憎悪が、恨みが、静謐であるべきはずの末期を、乱す。

 乱し続ける。

 妹が、母が、姉が、ここにはいないラウルまでが、すべて、無残な骸となって、転がっている。その無残な光景は、潰された目ではなく、頭の中に浮かび上がる。目で見るよりもなおのこと生々しい血の赤黒さや、死人の青白い肌を、見せつけるのだ。

 それでも、堪えるつもりだった。

 打ち捨てられた床の上、息を確かめるために爪先で蹴り上げられる。自分自身の呻き声よりも大きく家族の呻き声が耳を打ったと同時に、拷問吏たちの禍々しいまでの笑い声が、ジュールの最後の堰を、切った。

 目の前へと下ろされていた天への階を、ジュールは、自ら、拒んだのだ。

 神などいない。

 神など、いらない。

 恨みを晴らしてくれるなら、オレのすべてなんか、あんたにくれてやる。



 ――――――――――っ!



 かすかすとした絶叫が、男の名をつづったのを、その場に居合わせた誰が理解しただろう。



 その時、雷鳴とともに、教会の鐘撞き堂が、崩れ落ちたのだ。







 今日はあの青年とはまだ会っていない。おそらくは、思っているよりも朝早いのだろう。

 嵐のせいで、時間の感覚が、狂っている。

 空腹だった。

 暇でもある。

 沈黙の行で、慣れているとはいえ、やはり、ここが俗世であるという気のゆるみがあった。

 あれがあってから、部屋は変えてもらっていた。

 錯覚とはいえ、あんなことがあった廊下に部屋が面しているというのは、いい気持ちではないからだ。

 司祭は、部屋を出た。

 はたりと波打つタピスリーに全身が震えたが、タピスリーはただ、隙間風に煽られただけなのか、ただ、揺らめくだけだった。

 全ては、自分の、思い込みなのか。

 錯覚なのか。

 顎に手を当てて考える。

 魔女を裁くことに負い目など感じはしなかったが。

 だが。

 ふとそらせた視線の先に、何くれと世話を焼いてくれている青年がいた。

 交差する廊下を、どこかに向かっている。

 自分以外の存在に、司祭の全身が、弛緩した。

「待ってくれ」

 暇なら、相手をしてくれないか。

 なに、話し相手でいいのだ。

 そう言いかけて、司祭は、口を閉じた。

 青年は、自分には気づいていない。

 何処へ行くのだろう。

 興味を引かれて、司祭は、ジュールの後をつけたのだ。
 






 ほとほとと、扉をノックする音に、室内を満たしていた音が止まった。

「どなたですかな」

 しわがれた声が、誰何する。

「オレです。入ってもいいですか」

「どうぞ」
 促されて、ジュールが扉を開けた。

 窓を締め切り、琥珀色の明りだけが灯った室内で、三人の老婆が糸を紡ぎ、糸を染め、布を織っていた。

 カラカラと紡ぎ車がふたたび回りはじめる。

 機織りの軽やかな音。
 軽く、リズミカルな音が、石造りの部屋に、小気味よく響く。

 桶の中で赤く染め上げられた糸が、瞬く間に乾き、紡がれてゆく。

 赤一色のはずの糸が紡がれると、さまざまな色へと変化してゆくのは、まさに、人間業ではない。その不思議な縦糸と横糸とが絡みあって、一枚のタピスリーとなろうとしている。その、本来なら気の遠くなるような作業が、皺深い老婆の手にかかれば、幾倍もの速さで図柄を描き上げてゆく。

 生贄のアンドロメダ姫が、やがてタピスリーとして現われた。

「まだ、終わらないんですか」

 ジュールの問いに、

「もうしばらくじゃよ」

「若い者はせっかちじゃの」

「あとしばらくの辛抱じゃ」

 しわがれた笑い声が、室内に満ちた。

「それ。この桶の染料がすべて使いきれれば、若さまたちの望みはほぼかなったも同然じゃろう」

「あの人間は、ずいぶんと同胞の血を流してきたようじゃからな。ワシらにしても、使い出がありすぎじゃわい」

「ほんにな。騎士でもあるまいに」

「戦でもあるまいに」

「聖職者を名乗って、この血の量とはな」

「この恨みの量とはな」

「この、涙の量とはな」

 けらけらと、楽しげに笑う老婆たちの影が、石積みの壁に妖怪じみた絵を描く。

「あの人間は、まともに地獄にも行けまいて」

「行けんなぁ」

「行けん行けん」

「地獄の鬼どもも、扱いに困ろうて」

「このごろではそんなやからが多すぎるとも聞くがの」

「おお。聞いたわ聞いたわ」

 けらけらけらけら。

 老婆たちは笑いながらも手を休めることがない。

 桶の中の赤い液体が、紡がれゆく長い糸が、絡み合い織られゆく布が、か細い悲鳴を上げ続ける。生贄のアンドロメダ姫が、血の涙を流し、甲高い悲鳴をあげるのを、その場に立ち尽くすジュールは聞いていた。







「タピスリーができたってさ」

 ラウルの頬を撫でていたユージーンが、ジュールのことばに振り返る。

「いったいいつがきたら、全部揃うんだ」

 苛々しながら、アンドロメダ姫のタピスリーを広げて見せる。

「いないと思っていたら、彼女たちのところにいたのですね」

 受け取りながら、ユージーンが独り語ちた。

 青い波。陽射しきらめく空。人間の都合など関係ないとばかりのきらめきのなかで、半裸の姫が、岩肌に縛められている。やがて救いが現われることなど知らないのだろう。うなだれた頬に、閉じた瞼に、絶望のかげりが宿っている。
 
「あいかわらず、彼女たちの手はみごとなものですね」

 ずしりと重いタピスリーが、ユージーンの腕の中で、かすかに波打つ。

「最後の一枚は、最後の犠牲者のもの。その恨みも絶望も、生々しいかぎりでしょうから」

 恬淡と、ユージーンがつぶやいた。

「まだなのかよ」

 まだか。

 ジュールの全身が震えた。

「まだですけれどね。彼女たちがそう言いませんでしたか? 残念ながら、ラウルが救われるのも、君が救われるのも、まだ先のようですね」

 ふたりの視線がラウルに向けられた。

 ラウルはただ眠っている。

 稚いばかりの寝顔は、どんな夢を見ているのか、穏やかなものだ。

「たぶん、ラウルはオレと違って優しいから………だから、目覚めないんだろう」

 ポツリと零れ落ちた一言に、ユージーンがジュールを見た。

「今更、後悔、ですか?」

「違う。後悔なんか……していない。ただ…………ただ、ほんの少しナーバスになっちまってるだけだ」

 自分で、この道を選んだことを、後悔はしていない。それでも、違う道があったのだと、限りなく後悔に近い感情が、ラウルを見ていて脳裏を過ぎったのも確かだった。

「君も、充分に優しいと思いますけどね」

「オレ? オレは、ただの弱虫だよ。ラウルは復讐なんか望んでない。ただ与えられた死を、それがどんなに酷いものでも、受け入れたんだ。けど、オレには、それが出来なかった。だから、今、オレは、ここにこうしているんだ………あんたの親父に魂を売り渡してまで」

「自分だけのためじゃないでしょう。家族のためにも、許せなかった。だから、父に、すべてを渡すと、誓った。違いますか?」

「そうだ………けど」

「それでいいと思いますけどね。あなたの家族も、最後の一人も、他の者たちも。苦しみつづけているじゃないですか。今もね。彼らの苦痛は、彼らを害したものの痛みでしか癒されませんよ」

 昔、どこかの誰かが言いましたっけね。

 右の頬を打たれれば、左の頬も出しなさい――と。

 打たれた痛みは、その本人にしかわかりませんよ。

 だから、別の誰かは、目には目を、歯には歯を――――と言ったのでしょうけど。

 けれども、それだって、被害者にとっては、生ぬるい――と、苛立つことでしかないのでしょう。

「ね」

 琥珀色の眸が、笑みをかたちづくる。

 赤いくちびるが、持ち上がる。

 美しい微笑みに、ジュールの背筋が、逆毛立った。







 なにかがおかしい。

 いや。

 すべてが、おかしいのだ。

 終わりのない嵐。

 立派な城。

 美貌の城主。

 家令らしい若者。

 そうして、城中を埋め尽くすかの、おびただしいタピスリー。

 これらを織っているのが、若者が入っていった部屋の主なのだろうか。紡ぎ車の音や、機織の音に混じって、しわがれた笑い声が、聞こえていた。

 神話に登場する獣たちの目が、自分を見ているような気がして、眠れない。

 すばらしい味のワインを再び取り上げる。浴びるようにして、司教は、飲んだ。

 酔いが、眠りを導いてくれることを祈りながら。

 しかし―――――

「うわあっ」

 襲い掛かる悪魔に、飛び起きた。

 薄暗い室内は、しんと、冷たい空気に満ちている。

「ふう」

 流れる冷汗を拭ったとき、さわさわと、ひそひそと、ささやき交わす声が耳に突いた。

 楽しげではない、不安を煽るような、そんな声音だ。

「だれだっ」

 司教の声に、ぴたりと、止まる。

 辺りを見回しても、誰もいない。

 暗がりに慣れた目に映るのは、壁を覆う、タピスリーの、影。

 脳裏を過ぎるのは、この間の光景。

 ぞくりと、後頭部が逆毛立った。

 こんな城にはいられない。

 そう思うのに、なぜか、出てゆこうとする意思が、挫けるのだ。

 嵐――だけが、理由ではない。

 しかし、なにが、こんなにも、自分を押しとどめようとするのか。

 意識が冴えて、寒気に震えた。

 暖炉の火が、消えかけている。

 薪を足さなければ。

 ベッドから降りた足元が、べちゃりと濡れている。

 雨漏りなどしようはずがない、堅牢な城の一室だというのに。

 見下ろす視線の先、消えかけた炎に赤黒く光を弾く床が生々しい。

 そう見えただけで、全身に鳥肌が立った。

 奥歯を噛み締める。

 震えるからだを抱きしめて、一歩進んだ。

 これは、幻覚なのだ。

 自分は、神に仕えるもの。

 これは、試しなのだ。

 うろたえてはいけない。

 けれど、いったい、どっちの試しなのだろうか。

 自分は、神に仕えるもの。

 思う心の片隅で、神の試しか悪魔の試しか、疑心がわきあがる。

 震える手で火掻き棒を取り上げた。

 今にも、暖炉のどこかから、火に焼け爛れたなにかが出てきそうな気がしてならない。

 気の迷いだ。

 しかし――――

 ドクンドクンと、心臓が痛いくらいに、鼓動を刻む。

 耳鳴りが、上下の感覚を乱すような、錯覚があった。

 火掻き棒を暖炉に差し込んだ瞬間、積み上げられていた薪が、突然、音をたてて崩れた。

 ひときわ大きく炎が揺らめき、そうして、室内は、完全な闇に閉ざされた。







「うわあぁっ!」

「うわっ」

 叫びながらまろび出てきた司祭を避けるまもなく、ジュールはしたたかに背中を壁にぶつけた。

「いってぇ…………」

 後頭部をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。

 気がつけば、足元で蹲っている司祭が、小刻みに震えている。

 ジュールの口端が、ひきつるように震えた。

 このまま足蹴にしてやれば、どんなに…………。

 ふるふると、頭を横に振る。

「司祭さま。どうなさいました」

 しゃがんで肩に手をかけると、顔を持ち上げた。

「あ、あ、ええ、あなたですか」

 司祭の怯えたさまに、どうしても笑いそうになる自分を律しながら、ジュールは、手を差し出した。

「どうぞ」

「すみません」

「まだ、夜は明けませんよ。お部屋に戻られて、おやすみください」

 扉を開けようとするジュールの手に手をかけて、

「いや。部屋を、部屋を変えてほしい」

と、縋りつかんばかりである。

「また、ですか?」

 ほんの少しだけ呆れたふうに、ジュールは、司祭を見下ろした。

 おそらく、タピスリーにこめられた魂たちが、これ幸いと司祭に襲い掛かったのだろう。

 溜息をつきながら、

「わ、悪いと思ってはおるのですが」

 いつもの尊大な雰囲気が嘘のような司祭に、

「明日では、いけませんか」

 半分は本音である。誰が、夜の夜中に部屋を整えたいものか。

「どこでも結構です」

 そうまで言われては、突き放すわけにもいかないだろう。お楽しみはまだまだ後のことなのだから。

「とりあえず、今夜は私の部屋をお使いください」

 ベッドを使わすくらいなら、問題は起きないだろうし。

 ジュールは、司祭を、階段下の自室へと案内した。







「どうしました」

 溜息をついたジュールに、ユージーンが、声をかけた。

 どこか、笑いをにじませたような声に、

「意地が悪いよな」

 じろりと見上げた。

「どうぞ。蜂蜜とレモンを入れておきましたよ」

「王子さま御手ずから、ありがとうございます」

 恭しく額の前に持ち上げる。

「どういたしまして。未来の母上には、孝行いたしますよ」

 喉に送ろうとしていたワインが、気管に逸れた。

 ひとしきり咳き込んで、ジュールが涙目を擦った。

「な、んっつーことを」

 つぶやくと、

「昨夜は、父上がお見えのようでしたけど」

 よっぽど、君のことが心配なんですねぇ。

「わるかったな」

「なにがあったんです」

 突然、ユージーンのまとうものが、真剣なものへと変化した。

 琥珀の眸が、濃さを増す。

 とろりとした黄金のようなまなざしは、あまりに非人間的過ぎて、後頭部の髪が逆毛立つ。

「……タピスリーが、司教を襲ったらしいんだ。それで、部屋を変えてくれっていうから」

 ジュールは肩を落とした。

「部屋くらいかまわないだろって思ったんだけどさ」

「ああ……そういうことですか」

 クスリとひとつ笑いをこぼすと、

「父上も、嫉妬深いようですね」

「なんでよ。オレは、悪魔に魂を売り渡したんだ。なのに、なんで、あんたもあんたの親父も、別の意味にとるんだよ」

 ジュールはこめかみを押さえた。

「でも、それだけじゃなかったんでしょう?」

 悪戯そうに言われて、もはや何度目かもわからない溜息をついた。

 まさかとは思うが、あの悪魔もこの悪魔も、自分の行動を監視してでもいるのだろうか。

 昨夜、自室に案内してすぐに司教の部屋に行こうと思っていたのだが。

『すみませんが、手を離していただけませんか』

 司教は首を振って、ジュールの上着を離してはくれない。

『頼みますから』

『いやだ』

 聞き分けのない子供のような力に、ジュールは適わなかった。

 押し倒され、抱きしめられ、吐息が耳を掠める体勢に、ジュールは焦った。

 オレのほうが、厭にきまってるだろう。

 魂を売った相手に、そういう行為をほのめかされてはいるものの、はっきり言って、ジュール自身にそういう趣味はないのだ。

 もがけばもがくだけ、溺れた人間がなにかにしがみつこうとするように、必死になってすがりついてくる。

 クソッ。

 こんなこと知られたら。

 あの男が自分に言ったことばが、脳裏を過ぎった。

 からだを自分以外に触れさせるなと。

 自分のものなのだと。

 肝に銘じておけ―――――と。

 冷たい汗が、ジュールの背中を滑り落ちる。

 なんで、引き剥がせないんだ。

 躍起になれば躍起になるほど、まるで蛭のような執拗さで、しがみついてくる。

 神を信じているんじゃないのか。

 神の僕なのだろうがっ!

 ぎゅうぎゅうと絡み付いてくる感触に、怖気が立つ。

『やめっ』

 司教相手の仮面が、剥がれ落ちそうになったその刹那だった。

 大きな音をたてて、木製の窓が、開いた。

 司教が、ひときわ大きな悲鳴を上げて、ジュールを放した。

 雨が吹き込み、風がはいってくる。
 
 突然の吹き込みに、しかし、はかないはずの蝋燭の炎は、はためくだけで、消えずに燃えさかっていた。

 窓に近づいたジュールは、背後に、あの気配を感じて立ちすくんだ。

 何で来るんだ。

 しかも、こんなタイミングで現われたりしたら、司教にばれたら、万事休すじゃないか。

 恐怖よりも、腹立たしさが勝った。

 振り返ると、案の定、そこには、あの存在が着衣をはためかせて立っていた。

 彫の深い面を、陰影が厳しいものに飾り立てている。

 ガラガラと、雷鳴が、轟いた。

 幾条もの雷光が、夜空を引き裂く。

 どこかに落ちた気配が城を震わせた。

 きつい視線が、ジュールに据えられ、微塵も動かない。

 近づいてくる男に、ジュールが、後退さる。

 これまでに感じたことがないほどの恐怖に、一歩が、心もとなかった。

 頭から、司教のことなど、消えていた。

 ただ、視線を逸らせれば最後だと。それだけが、頭を占めていたのだ。



 どうしようもなかった。

 男の怒りに、なすすべもなく、ジュールは、摘み取られ、毟られ、散らされたのだ。



「君に関しては、父上も、結構、我慢がきかないのですね」

「おかげで、動けやしない」

 ユージーン相手だと、片意地張らずにいられる。

「いいきっかけですよ。司教は、別のものに任せましたから」

 ジュールが肩を竦めた。

「落ち着かないなら、ラウルの世話をしますか」

「あんた以外がラウルに触って、いいのか?」

 クスクスと、ユージーンが笑った。

「君は、ラウルに不埒な感情を抱いてはいませんからね」

「あっ、あたりまえだろうっ!」

 なんで、弟に。

 血は繋がっていなくても、ラウルは、弟なのだ。

「では、すみませんが、お願いしましょう」

 そう言うと、ユージーンは、ジュールを残して、部屋を出て行った。






プロフィール

魚里

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる