2005-07-31(Sun)

めずらしく、写真はジュニばーです。
ちょっと、昇紘x浅野で、萌えつつある話。
タイトル、未定。
完結も、未定かな。
「うわっ」
悲鳴をあげて、オレは飛び起きた。
心臓が、痛いくらいドクドクしてる。
怖かった。
ほんっとうに、殺されるんじゃないかって。
オレが、胸を撫で下ろしてると、
「浅野、オイ、浅野って」
誰かが、オレの名前を呼ぶ。
へ? とばかりに、顔をあげると、オレの前の席の戸倉が心配そうにオレを見てた。
え? 戸倉……ってことは。
オレは、恐る恐る周囲に視線を走らせた。
ああ、間抜けなことをやっちまった。
クラス中の視線が、オレに向かってる。勿論、センセーもだ。
あきれたように、教壇からオレを見下ろしてる。
顔面が火を噴きそうに熱い。
「あ……え、と。スミマセン」
へろりと笑って、頭を掻きながら下げると、
「ついでだ。目覚まし代わりに、次、ページ四十七の第二センテンスから浅野に読んでもらおう」
にやりと笑って、リーダーの岡部が言った。
「どうしたんだよ。また、例の夢か?」
弁当をつつきながら、戸倉が、リーダーの授業中のことを蒸し返す。
「あ? ああ」
こいつとは、中学からの付き合いだから、結構気心が知れてる。
そんなもんで、最近、オレを悩ます不眠の原因を、コイツには喋ってた。
「いっぺん、占い師にでもみてもらうか? それとも、お払いのほうか」
真剣な顔をしてそんなことを言うもんだから、噛みしめてた唐揚げの味が半減しちまった。
こいつってば、マニアってほどじゃないけど、その手の話題好きなんだよな~。
オレは、ってーと、きっぱり、そういうのは、だいっ嫌いだったりする。
心配してくれてるのは、わかるけど、けどな~、
「遠慮する」
ペットボトルのお茶で唐揚げを喉に押し流してから、オレは、キッパリ辞退した。
「でもさ~」
まだ言うか。
じろんと睨むけど、効き目がない。
「今月はいってから、毎晩だろ? 同じ夢見んの」
そうなんだ。
七月入ってから、もう、夏休みの課外授業が終わろうって時期になってんのに、オレってば、毎晩おんなじ夢を見る。
いや、これが、リッチでゴージャスな夢とか、ボンキュッバンな美人がでる夢とかなら、毎晩だってかまやーしないんだけどさ。
そんな夢だったら、悩みやしねーってか。
だったら、どんな夢って、さ。
オレが、その……。
「毎晩殺されそうになるんじゃ、寝れねーよな」
食欲なくなっちまった。
最後に残しておいたネギ入りの玉子焼きを食べる気力がなくなったオレから、すかさず、
「いただき」
と、戸倉が、掠め取る。
ま、いいけど。
「殺されそうになるんじゃなくて、殺されてるんだよ。オレは、毎晩」
ここまで詳細には言ってなかったけど、これが、事実だ。
びっくりした目で、戸倉がオレを見る。
「殺されるの?」
「そうだよ」
「毎晩?」
「そう!」
ああ、思い出しちまった。
「よく生きてるねー」
どういう感想よ。
「え? だって、ふつー夢の中で自分が殺されたら、現実の自分も死ぬって」
「なんだよ。そのふつーってのは。夢で殺されたから死にましたって、だれかが言ったってーのかよ」
どっかは知らねー。とりあえず、森の中で、オレは、必死に逃げてる。見たことないような馬に乗って。変な格好をして――だ。オレは、何かを必死になって呼びにゆかなくちゃって、焦ってる。そうしないと、オレは、二度と立ち直れない。そんな、切羽詰った、思いがあった。けど、できないんだ。上空から現れた、人相の悪い、変な男、やさぐれた兵隊みたいな、人相の悪い男に、因縁つけられるかなんかして、さ。それで、ヤツが手にしてた槍で、突かれて、倒れるんだ。ああ、これで、オレは、犬死にだ――って、悔しいような悲しいような、そんなことを考えながら、木々の間から見える腹が立つくらい青い空を、見上げてる。
そんな夢だ。
「それって、ますます、変だよ。浅野」
「わかってる」
かなりリアルで、悲しい夢だ。
悔しい。
夢だってわかってるのに、なんだって、こんなに悔しいんだろう、悲しいんだろう。しかも、罪悪感まであるんだから、どうしようもない。
「浅野の前世なんじゃねー」
ああ、戸倉、ひとごとだと思って、スパッと言ってくれるよな。
そりゃあ、オレは、自分がひとかどの人物だなんて思ってないけど、それでも、どうせ前世って言うなら、夢を見たって罰は当たらないだろーと思う。
歴史上の偉人とか、ハレム持ってる金持ちとか。
「何が悲しくて、犬死にするのが、オレの前世よ」
責任とってそれ食べろよな――と、オレは、弁当箱を片付けたのだった。
そんな戸倉との遣り取りを、オレは、ずいぶん後になって思い出した。
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