2005-02-13(Sun)

少し離れた場所に、飛んでいった手燭の灯が、燃えている。
頭の中に、雪の中で死んでる自分の映像が、あった。
首に、手の跡が刻み込まれてる。もしくは、血を流してる。そんなオレだ。
ああ、なんか………。
オレを見下ろしている男の顔が、雪明りに反射してる。奇妙に歪んで見えるのは、落とした灯のかぎろいのせいだ。
ぽとり……と、糸を引くようにして頬に落ちてきたのは、唾液だった。気色悪い。酒臭い。
ああ、イヤだ。
なんだって、こんな酔っ払いに、オレは、押さえつけられているんだろう。しかも、雪の上だ。背中が、湿っている。
藻掻けば藻掻くほど、男の引き上げられてる口角の角度が増す。
面白がってるんだと思えば、恐怖を押しのけて、腹が立ってきた。
クソッ!
こなくそとばかりに、渾身の力を込めて蹴り上げた膝が、どうやら、いい具合にヒットしたらしかった。
いや、その……急所だな。
ラッキーだろう。
この隙を逃したら、オレは、最後だ。
立ち上がったオレは、蹲って悶えている男を尻目に、駆け出した。
滅茶苦茶に走った。
どこをどう走ってるかなんて、わかるはずもない。もとより、地図すらないのだ。
とにかく、ぐるりと回って、男のところに戻らないように、それだけを祈ってた。
そうして、オレは、完璧に迷っちまったんだ。
夜の森で。
灯すらなく。
背中や腰は、さっきのあれで、びしょ濡れだ。
このままだと、間違いなく、風邪を引いちまう。
そのまま、野垂れ死にか?
せっかく、明蘭たちが救ってくれたっていうのに、また行方知れずになっちまうのか?
あっちでは、おふくろやオヤジが、心配してんだろうな。
考えないようにしていた、もとの世界の、自分の居場所を思い出す。本当なら、気に食わないってぶつくさいいながら、それでも、高校を出て、大学か専門学校に行って、就職か、フリーターか。そんな、平凡な毎日を過ごして歳とって死んじまうはずだったのに。いったい、どこでどう、歯車が狂っちまったんだろう。
奇妙で得体の知れない世界で、オレは、いったい、なにをやってるんだろう。
ぶるりと胴震いをして、オレは、木の幹に背もたれた。
絡み合った枝の向こうに、たくさんの星が輝いている空が見える。
両親や、悪友たちの顔が、なんとなく、浮かんでは消えてゆく。それが、明蘭と蓮雫の顔に取って代わった。
明るくて可愛くて、しっかりしてる明蘭と、静かに明蘭の補佐をしてる、蓮雫の顔だ。
ふたりに心配をかけちゃだめだ。
明蘭なんか、怒ってるんだし。
帰ったら、オレがいなくなってるなんてなったら、どんな恩知らずだって思われちまう。それだけは、ヤだった。
こんなとこで、簡単に、絶望に浸ってちゃ駄目だ。
そう。
悲劇のヒロインなら、美女や美少女が相場だ。
オレなんか、その辺に転がってるただの男だ。似合いやしない。
まだ、大丈夫。
そう。考えてみろ、見知らぬ土地だって、オレは、助けられたんだ。運がいい証拠だ。こんなところで、死ぬわけがない。
こういう場合は、落ち着いて。
落ち着くんだ。
すーはーと、オレは、深呼吸を繰り返した。
乾いた枝を集めて、火をつけよう。たしか、乾いた、コケもいるはずだ。あとは、枯葉だったかな。
枝と、コケ、枯葉を両手いっぱいに集めて、オレは、どこか、よさそうな場所を探してうろついた。
と、
「ラッキー」
ほらみろ、オレってば、やっぱりついてるんじゃん!
ちろちろと、火が見える。
少し距離があるみたいだけど、何てことない。
オレは、それを目指して、歩き出したんだ。
せっかく拾った、薪は持ってゆくことにした。
燃料は大いにこしたことがないからな。
こんな感じです。引く引く……。すみません。
ちょっとね、漣遠関係のほうも萌えてたりするんだけど、今家に、姪っ子がいるので、書けない。うううう。せっかくの休みなのに~~~xx ストレス溜まる一方だ。
とりあえず、書きかけを書き上げるようがんばるのが先だろうvv 今更ですけどね。
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