ネタがないので二回目アップ
2016-01-05(Tue)
いつもご来訪&拍手ありがとうございます。
タイトル通りネタがないので「運命の恋人」二回目アップです。
語り口調はわざとに変えましたので、ご理解ください。
** 侵略 **
ほんの少しだけ前のこと。
人間の王さまは困っていました。
人間の世界に魔界からマモノがやってきては、悪さをするようになったからです。
マモノは人間を食べたり傷つけたり攫ったり作物を荒らしたり、したい放題に暴れまわるのです。
王さまは魔界の王さまに陳情を届けました。
しかし、魔王さまからの返信はありませんでした。
人間の王さまは、苦悩をその少しお年を召された顔に湛えました。
けれど、王さまのもとには毎日たくさんの悲鳴が届けられます。
今日はどこの人間が食われた。
あそこの娘さんがさらわれてマモノの子を宿した。
どこそこの畑が軒並み荒らされた。
どうか助けてください。
マモノを滅ぼしてください。
滅せないのなら、追い払ってください。
しかたないどころではありません。
ここには人間の暮らしもあるのです。
どうにかしなければなりません。
「これはもう、魔王によるミドガルズに対する侵略に他なるまい」
決を下した人間の王さまは普段あまり仲の良くない神官さまに頼りました。
「承知いたしました」
神官さまが神殿中の人間を集めて祭壇に向かって三日三晩経ちました。その間、水は別として誰一人食物を口にしてはおりませんでした。
やがて一筋の光が天窓から降り注ぎました。
神官さまを指し示す光は、何事かを神官さまに語りかけているかのようでした。
しばらく目を閉じていた神官さまでしたが、光が色あせ消え去ると同時に目を見開きます。
「神託が降下されました」
神官さまが語る内容は、とてつもないものでした。
ここ数百年、誰もが行ったことのない秘儀中の秘儀を行い異世界より勇者さまを呼び寄せるというものだったのですから。
たちまち王さまたちも駆けつけ、その日のうちに秘儀は執り行われることになりました。
文字なのかどうなのか素人目にはわからないものが床に描かれ、神官さまはじめ神殿のお歴々がその周囲を取り囲み不思議な響きの祈りを唱えて終わります。
咳(しわぶき)ひとつたたない厳粛な雰囲気のなか、しばらくは何事も起こらず落胆の色がその場を染めて行こうとしていました。
しかし。
ややあって、徐々に変化が起きはじめたのです。
陽炎(かげろう)にも似たフレアが文字の上にほのめきだしたと思えば、ひときわ激しい光となり、神官さまはじめ部屋に揃った人々の目を射たのでした。
人々が目を閉じ再び開いたとき、彼らは目を見張ることになりました。
まるで太陽の光のような激しさを見せたフレアの輝きはすっかりと消え去り、代わってそこにはひとりの若者が現れていたからです。
黒い髪をした若者は見た目は十代半ばからいって二十歳といったところでしょうか。体格は年頃よりも少し貧弱と見受けられました。
象牙色の肌の中に収まり良く並ぶ濃い褐色の瞳が、不安そうに周囲を見回しておりました。
「おお! 勇者さまだ」
最初に口にしたのは、誰だったでしょう。
王さまを除いた人々がその場に膝間付きます。
「我らの救い主だ!」
三々五々立ち上がったものたちが腰の引けている若い勇者さまを取り囲み、口々に叫びます。
すっかり物怖じした態度の勇者さまは、何が起きたのか何が起きるのか、理解していないようでした。
その彼を立ち上がらせ、神官さまが導きます。
これから彼は何をすれば良いのか。
そうして、残酷な事実ではありますが、彼はその使命を果たしたとしても、二度と元の世界へと戻ることが叶わないのだと。
勇者さまがどのようにして真に勇者さまとなられたのかは、こちらで語るまでもなく様々な書物や劇などのほうがよほど詳しく語ってくださるでしょう。ですのでその辺りは割愛させていただきたいと思います。
*****
賑やかな出陣式の後、彼らは目立たない服装に着替えて改めて出発しなおていました。なにしろ鎧甲冑などは派手な上に重くかさばります。旅はできる限り軽装がいいというのは常識でありましょう。そうして立派な鎧兜を脱いだ彼らは少々見てくれはいいものの普通の旅人とさして変わることはありませんでした。
最初の出会いは、勇者さまが王都を出て十日あまり。
王都周辺の森を抜けた先にあるささやかな村でのことでありました。
「あれは?」
様々な葛藤を乗り越えた勇者さまが、ふと足を止められました。
タイトル通りネタがないので「運命の恋人」二回目アップです。
語り口調はわざとに変えましたので、ご理解ください。
** 侵略 **
ほんの少しだけ前のこと。
人間の王さまは困っていました。
人間の世界に魔界からマモノがやってきては、悪さをするようになったからです。
マモノは人間を食べたり傷つけたり攫ったり作物を荒らしたり、したい放題に暴れまわるのです。
王さまは魔界の王さまに陳情を届けました。
しかし、魔王さまからの返信はありませんでした。
人間の王さまは、苦悩をその少しお年を召された顔に湛えました。
けれど、王さまのもとには毎日たくさんの悲鳴が届けられます。
今日はどこの人間が食われた。
あそこの娘さんがさらわれてマモノの子を宿した。
どこそこの畑が軒並み荒らされた。
どうか助けてください。
マモノを滅ぼしてください。
滅せないのなら、追い払ってください。
しかたないどころではありません。
ここには人間の暮らしもあるのです。
どうにかしなければなりません。
「これはもう、魔王によるミドガルズに対する侵略に他なるまい」
決を下した人間の王さまは普段あまり仲の良くない神官さまに頼りました。
「承知いたしました」
神官さまが神殿中の人間を集めて祭壇に向かって三日三晩経ちました。その間、水は別として誰一人食物を口にしてはおりませんでした。
やがて一筋の光が天窓から降り注ぎました。
神官さまを指し示す光は、何事かを神官さまに語りかけているかのようでした。
しばらく目を閉じていた神官さまでしたが、光が色あせ消え去ると同時に目を見開きます。
「神託が降下されました」
神官さまが語る内容は、とてつもないものでした。
ここ数百年、誰もが行ったことのない秘儀中の秘儀を行い異世界より勇者さまを呼び寄せるというものだったのですから。
たちまち王さまたちも駆けつけ、その日のうちに秘儀は執り行われることになりました。
文字なのかどうなのか素人目にはわからないものが床に描かれ、神官さまはじめ神殿のお歴々がその周囲を取り囲み不思議な響きの祈りを唱えて終わります。
咳(しわぶき)ひとつたたない厳粛な雰囲気のなか、しばらくは何事も起こらず落胆の色がその場を染めて行こうとしていました。
しかし。
ややあって、徐々に変化が起きはじめたのです。
陽炎(かげろう)にも似たフレアが文字の上にほのめきだしたと思えば、ひときわ激しい光となり、神官さまはじめ部屋に揃った人々の目を射たのでした。
人々が目を閉じ再び開いたとき、彼らは目を見張ることになりました。
まるで太陽の光のような激しさを見せたフレアの輝きはすっかりと消え去り、代わってそこにはひとりの若者が現れていたからです。
黒い髪をした若者は見た目は十代半ばからいって二十歳といったところでしょうか。体格は年頃よりも少し貧弱と見受けられました。
象牙色の肌の中に収まり良く並ぶ濃い褐色の瞳が、不安そうに周囲を見回しておりました。
「おお! 勇者さまだ」
最初に口にしたのは、誰だったでしょう。
王さまを除いた人々がその場に膝間付きます。
「我らの救い主だ!」
三々五々立ち上がったものたちが腰の引けている若い勇者さまを取り囲み、口々に叫びます。
すっかり物怖じした態度の勇者さまは、何が起きたのか何が起きるのか、理解していないようでした。
その彼を立ち上がらせ、神官さまが導きます。
これから彼は何をすれば良いのか。
そうして、残酷な事実ではありますが、彼はその使命を果たしたとしても、二度と元の世界へと戻ることが叶わないのだと。
勇者さまがどのようにして真に勇者さまとなられたのかは、こちらで語るまでもなく様々な書物や劇などのほうがよほど詳しく語ってくださるでしょう。ですのでその辺りは割愛させていただきたいと思います。
*****
賑やかな出陣式の後、彼らは目立たない服装に着替えて改めて出発しなおていました。なにしろ鎧甲冑などは派手な上に重くかさばります。旅はできる限り軽装がいいというのは常識でありましょう。そうして立派な鎧兜を脱いだ彼らは少々見てくれはいいものの普通の旅人とさして変わることはありませんでした。
最初の出会いは、勇者さまが王都を出て十日あまり。
王都周辺の森を抜けた先にあるささやかな村でのことでありました。
「あれは?」
様々な葛藤を乗り越えた勇者さまが、ふと足を止められました。
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